研究領域 | 共創的コミュニケーションのための言語進化学 |
研究課題/領域番号 |
18H05068
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森田 純哉 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40397443)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | コミュニケーション / 認知モデル / 認知アーキテクチャ / 実験記号論 / 自閉傾向 |
研究実績の概要 |
本研究は,自閉的傾向と認知アーキテクチャに焦点を当てた共創コミュニケーションの研究をおこなう.自閉的傾向は,コミュニケーション障害と関連づけられつつ, 人類の歴史における偉大な発見との関連も指摘されてきた.しかし,自閉的傾向が人類のコミュニケーション・言語の様式に与えた影響は明らかではない.本研究では,メッセージ付き協調ゲームを課題とした実験的・構成的アプローチによって,この問題を検討する.その際,自閉的傾向の認知モデルを ACT-R (Adaptive Control of Thought-Rational: Anderson, 2007) を 用いて構築する.このモデル化により,自閉的傾向のコミュニケーションの性質を一般的な認知メカニズムとの連続のなかで理解できると考える. H30年度は,特に実験的アプローチによって,自閉的な思考が集団における意図共有にどのように影響するのかを検討した.実験記号論の枠組みに従い,二者間で単純な図形を交換しつつ協調作業を遂行する課題を設定した.この課題では,進行にともない,初めは無意味であった図形に意味が割り振られる.自閉傾向の測定にはバロンコーエンによる自閉症スペクトラル指数 (AQ) を利用した.実験は集団で実施し,参加者は複数回,協調課題のパートナーを入れ替えた. これまでに累計で200名以上のデータを取得し,約120名のデータを分析した.その結果,自閉傾向は意図共有のプロセスを阻害するというより,促進することが示唆された.特に,AQ下位項目として「注意の切り替え(作業の定型化の度合い)」が意図共有の促進と有意に相関した.今後,ここで得られた知見をACT-R上に実装し,エージェントシミュレーションをおこなう.それにより,自閉的傾向が集団の言語進化に果たした役割かを明らかにする.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,本年度までに200名を上回るデータを取得した.そのデータの分析により,有意な知見も得られている.
|
今後の研究の推進方策 |
計画通り,今後は得られた実験データを再現する構成論的なモデル化を進める.その際,研究代表者がこれまでに構築してきたモデル (森田ら, 2018) をベースとして用いる.過去のモデルに対して,データにフィットするパラメータを探索することで,自閉傾向に即した課題遂行プロセスをシミュレーションできるようになると考えている.
|