H30年度は3~7歳(平均60.72ヶ月)の男児17名・女児17名を対象とし、触覚調査を実施した。具体的には、中身が見えない箱の中に手を入れてもらい、7種類(人工芝、滑り止め2種類、和紙、スポンジ、発泡スチロール、冷やした銅板)の素材について触り心地を自分の言葉で伝えるよう教示した。この際、箱の中に赤外線カメラを設置し、触行動そのものもデータとして、収集した。なお、この産出課題は、触知覚を子どもがどのように表現しようとするかを確かめるための予備的な位置づけとして行った。この結果、人工芝などの特有のオノマトペ「チクチク」のある素材については、こうした特定のオノマトペが年齢とともに回答されることが分かった。また、スポンジや発泡スチロールについては、引っぱったり・さすったりする触り方と、押して凹ませる触り方との違いによって、素材の表面に関して表現するか内部の弾力について表現するのかが異なることも明らかとなり、素材の特性に沿った表現が産出されることも分かった。さらに、素材の冷温については、他の素材とは大きく異なり、「冷蔵庫の中みたい」「銀色のもの」といった直喩・隠喩を用いた比喩表現が頻出し、素材の材質への言及もみられた。このように、触知覚語の獲得過程は、対象物体のみならず、その物体にどのように幼児が働きかけるのかが重要であることが明らかとなった。翌年度は引き続き、触覚行動と触覚表現の関連について調査を進める。
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