触知覚研究においてよく知られている5次元(2種の粗さ/硬軟/冷温/摩擦)を広範囲に網羅するように、触刺激を収集調整し10cm 四方の触素材としてまとめた。これらの素材を英国・チェコに在住の海外研究協力者に送り、同一の触刺激に対する各触刺激の5次元についての評定をしてもらいつつ、同時に新規のオノマトペを発してもらい、各言語におけるオノマトペを収集した。こうして日本語話者・英語話者・チェコ語話者によるオノマトペを集め、刺激に対する心理評定との関連を分析した。得られた新規オノマトペと、各言語における一般語の音素の分布との違いから触知覚に対する語の音象徴性を明らかにするため、より分析を進め、その分析結果を成果としてまとめ論文を作成中である。 さらに、本来一方向でしか成り立たないA->Bの関係の学習から逆方向のB->Aを同時に推論してしまうという「対称性バイアス」について、言語学習前の乳児が、そのバイアスを獲得していること、チンパンジーにはそのバイアスが見られないことを明らかにした。この結果は、人間特有の思考バイアスの起源と言語の起源に迫る発見であり、言語学習前の乳児とチンパンジーの思考の違いを同一の実験パラダイムを用いて直接比較した点でも極めて意義のあるものである。この研究成果を2021年度論文として発表した。
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