本研究課題では,間投詞の意図共有と構造に関する研究を進めてきた.主たる成果は以下の3つに集約される.まず,2019年度は,B03公募班代表の吉村優子先生と自閉症スペクトラムの幼児における間投詞の使用について共同研究を行った.特に間投詞の「ね」に対する脳の反応と,自閉症スペクトラムの幼児が呼びかけの際に「ね」を使用しないという事実を指摘した.さらに,定型発達児の会話において不確定な部分があると聞き返しをする「修復」という行為が見られるが,それが自閉症スペクトラムの幼児には観察されなかったという事実も指摘した.その成果は論文にまとめ,CSLIから近日中に公開予定である.次に,新学術領域研究『共創的コミュニケーションのための言語進化学』に参加することで収集できた情報も多分に含んだ『言語の構造 人間の言葉と動物のコトバ』を科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)を利用することで,2019年2月末に出版することができたことである.本書は,比較生物学的な視点から言語というものについて深く考えるきっかけを提供している.最後に,間投詞と(特に類像性の高い)イデオフォンにおける構造と意味に関する分析をまとめ,第56回シカゴ言語学会 (Chicago Linguistic Society 56) に採用されたことである.なお,シカゴ言語学会は予定の開催はキャンセルされ,発表自体は延期か中止だが,Proceedingsは発行予定である.
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