公募研究
本研究は、細胞集団の増殖プロセスに進化生物学と集団遺伝学の理論を応用し、腫瘍内多様性の形成メカニズムを構成的アプローチで理解することを目的とする。これは、当該領域が細胞社会ダイバーシティーの統合的解明を目指す上で重要な部分を補完するものである。当該領域の計画班は、(A01)シングルセルのオーミクス解析や3Dイメージングなど、急速に発展する定量化技術を用いた解析的実験研究が中核となっている。理論系の研究では(A02)、定量的実験データの統計解析や数理モデリングを行うものが多い。そのマクロな理解を受けて、最終的にはオルガノイドや異種移植といった構成的実験研究による実証も視野に入れている(A03)。しかし、細胞社会ダイバーシティーのような組織レベルの特性は、個々の細胞の性質の単なる総和ではなく、局所的な相互作用の連鎖から創発する高次の表現型であり、解析的理論によって諸要素に還元する方向性には限界がある。また実証実験には膨大な時間やコストがかかる。この問題を解決するために我々は、要素の記述から全体の振る舞いを組み立てていく構成的理論モデルを用いて、実証実験につながる橋渡しとなることを目指す(A02')。その結果は、(A03)構成的実験研究に対して、より効率的に研究対象を絞り込むことを助ける。
2: おおむね順調に進展している
初年度である2018年度は、シミュレーションを中心に行った。大腸がんと脳腫瘍を想定し、さまざまなパラメータセットを与えながらシミュレーションを実行し、腫瘍内多様性の生成過程における細胞分化、細胞移動、分裂様式、栄養勾配、自然選択の相対的役割を定量的に評価した。この研究が、来年度から行うデータ解析の基礎をなす。
2019年度は、前年度の結果の汎用性を確認するために、乳がん・肺腺がん・転移性前立腺がん・膀胱がん・食道上皮がん・卵巣がんなどの腫瘍内多型のデータを解析する。遺伝的変異のばらつきかたが、がん種によって異なることが想定できる。これらのデータに関して、近似ベイズ法によるパラメータ探索を行い(フレームワークは前年度に構築)、がんのダイバーシティー創出メカニズムに共通する普遍的要素と個別の要素を解明する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
Encyclopedia of Gerontology and Population Aging
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