本研究は、細胞集団の増殖プロセスに進化生物学と集団遺伝学の理論を応用し、腫瘍内多様性の形成メカニズムを構成的アプローチで理解することを目的とする。これは、当該領域が細胞社会ダイバーシティーの統合的解明を目指す上で重要な部分を補完するものである。当該領域の計画班は、(A01)シングルセルのオー ミクス解析や3Dイメージングなど、急速に発展する定量化技術を用いた解析的実験研究が中核となっている。理論系の研究では(A02)、定量的実験データの統計解 析や数理モデリングを行うものが多い。そのマクロな理解を受けて、最終的にはオルガノイドや異種移植といった構成的実験研究による実証も視野に入れている (A03)。しかし、細胞社会ダイバーシティーのような組織レベルの特性は、個々の細胞の性質の単なる総和ではなく、局所的な相互作用の連鎖から創発する高次の 表現型であり、解析的理論によって諸要素に還元する方向性には限界がある。また実証実験には膨大な時間やコストがかかる。この問題を解決するために我々は、要素の記述から全体の振る舞いを組み立てていく構成的理論モデルを用いて、実証実験につながる橋渡しとなることを目指す(A02')。その結果は、(A03)構成的実験研究に対して、より効率的に研究対象を絞り込むことを助ける。
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