研究実績の概要 |
幹細胞から分化した細胞は内在性プログラムによって様々な遺伝子が細胞の機能的相違に基づいて体系的に発現し、個々の機能を獲得しながら臓器内の適切な位置に配置される。このような内在性プログラムによる臓器の成熟過程では、細胞の機能に応じて特定遺伝子領域のエピゲノム状態が変化し、それらが起点となって細胞の機能的相違が生じるが、その詳細な機序は不明である。そこで本研究では、機能の異なる肝細胞の亜集団が組織内の位置に応じて適切に配置される肝臓をモデルとし、微量サンプルのトランスクリプトーム・エピゲノム解析を駆使することで、未成熟な肝細胞のエピゲノム変化によって機能の異なる肝細胞が生まれるメカニズムを明らかにする。これまでに行った研究では、肝細胞の1細胞RNAシーケンス解析の結果から機能の異なる肝細胞亜集団を特定し、それぞれの位置特異的なランドマーク遺伝子セットを同定した。また、エピゲノム解析を行う上で必要となる組織からの肝細胞採取について、レーザーマイクロダイセクションを用いて位置特異的な肝細胞亜集団を特異的に採取する方法を確立した。また、連携研究者の大川らが開発した微量サンプルのエピゲノム解析手法(ChIL-seq)(Harada et al., Nat Cell Biol. 2019)を導入し、レーザーマイクロダイセクションを用いて採取した肝細胞亜集団のエピゲノム解析が可能な実験系を確立した。
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