研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
18H05104
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
備瀬 竜馬 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (00644270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオイメージインフォマティクス / 細胞トラッキング / 画像情報学 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
組織・臓器内のダイバーシティに富む細胞間の相互作用解析において,画像データからの定量評価が重要である.従来の細胞検出・追跡といった自動定量化技術は,単一種の細胞を仮定している場合が多く,ダイバーシティに富む環境においては課題が残る.そこで,H30年度においては,複数の細胞種が混在するダイバーシティに富む多様な環境を対象として「細胞社会における個々の細胞の広がり」及び「細胞社会構成員の個々のダイナミクス」の定量化を目的として広がり解析に重要な細胞領域分割手法,ダイナミクス解析に重要な細胞追跡手法の開発を進めた. 輝度特徴を用いて細胞領域分割を行う従来手法では,細胞種や撮影環境が変わった際に精度が極端に落ちるという課題がある.また,細胞領域を学習データとして与えて,境界領域を学習する深層学習では,学習データ作成コストが高いという課題がある.そこで,細胞の中心付近の座標というより簡易なアノテーションを利用して細胞検出を行う深層学習を行い,ネットワークを解析して,検出に利用した領域を抽出することで,細胞領域を自動で抽出可能な細胞領域認識手法を開発し,複数の細胞種・顕微鏡でロバストに機能することを確認した.また,核染色画像を正解データとして用いることで,アノテーション全くなしで,学習できることを確認した. 細胞追跡手法として,深層学習で細胞の中心座標のみから細胞の位置及び動き方向を推定し,それらの情報を統合して個々の細胞を追跡可能な手法を開発した.本手法は,細胞種に関わらず,データドリブンで細胞中心座標と動きを推定できることを特徴としている.筋芽細胞を成長因子の種類及び割合を変えた4つの異なる環境(Control,FGF2,BMP2,FGF2+BMP2)で培養したタイムラプス画像シーケンス(各環境3シーケンス)を用いて,従来手法と比較した結果,細胞検出及び細胞追跡の精度を大幅に向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度の目標として設定した「細胞社会における個々の細胞の広がり」及び「細胞社会構成員の個々のダイナミクス」の定量化技術(多様な環境下での細胞検出及び追跡技術)の開発を予定通り進めた.細胞種が異なる場合においても,共通して利用可能な細胞位置推定マップ及び細胞移動推定マップ表現を提案し,データドリブンによる学習で高精度な細胞検出及び追跡を可能とする手法を提案した.さらに,学習データ作成に労力を使わずに,個々の細胞形状を認識できる手法を開発し,複数の細胞種・培養環境でのタイムラプス画像シーケンスを用いて,提案手法の有効性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
細胞社会の中で,どこにどんな細胞種(特定遺伝子発現細胞等)の集合が分布していて,それらが集団としてどのように移動して,いつ遺伝子発現を行ったかを示す細胞社会全体としての定量化技術も非常に重要となる.そのために,細胞周期・細胞分化・細胞種マーカ・遺伝子発現といった様々な細胞の状態を可視化する蛍光プローブで撮影した画像と合わせて解析することが重要になる.H30年度に開発した細胞追跡技術により得られた個々の細胞の時刻ごとの位置情報と蛍光プローブ像と融合して解析する手法の研究開発を行う.当面は,神経幹細胞を試料として用いて進める.細胞追跡結果と蛍光プローブ画像の位置合わせを行い,時刻ごとの細胞の状態を取得し,記述可能な統一フォーマットを検討し,細胞状態も含めた指標を算出可能な状態を目指す.これにより,本領域における他の課題へ容易に展開できる.さらに,本領域内の他の研究者と共同研究を行うことで,開発した技術を展開し,本領域に貢献する.
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