研究実績の概要 |
動物は時々刻々と変化する外界の状況を複数の感覚モダリティを通じて解釈することで適切な行動を決定し実行する。複数のモ ダリティにまたがった判断、行動選択がなされるには、異なった脳内経路を経由して処理される各モダリティの情報が脳内のどこかで統合される必要がある。本研究では脳全体を視野に入れた神経活動測定が可能で、かつコネクトミクス解析により回路構造を網羅的に同定できるショウジョウバエ幼虫をモデルとして用い、マルチモーダル感覚統合の脳情報動態を理解することを目的とする。 幼虫は頭部に侵害刺激を受けると後退運動により逃避する。この逃避行動は、2つのモダリティ、視覚(頭部への青色光の照射 )および触覚(頭部への機械的刺激)によって誘起される。代表者らは以前に視覚刺激、触覚刺激が後退運動を誘起する過 程を制御するコマンドニューロンをそれぞれ同定していた(Takagi et al., 2017、大浦ら、未発表)。本年度計画研究においては、マルチモーダル入力の統合に関わるような候補細胞を特定するため、視覚刺激、触覚刺激から後退運動出力に至る神経経路をコネクトミクス解析により探索し、候補となる回路構造を同定した。さらに、このなかに視覚刺激、触覚刺激の情報が統合する可能性のあるノード細胞の候補を特定した。
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