公募研究
本年度は、申請者が既に開発した技術を発展させ、異なる階層の脳活動を同時計測する技術を開発した。申請者が既に開発した神経細胞集団と脳血流をマウス大脳皮質全域で同時計測する1光子イメージング技術(Matsui et al., 2016)を発展させ、単一神経細胞-脳血流を同時計測する新規手法を開発した。また、新しく考案されたデータ解析を応用することにより、広域カルシウムイメージングによって単一神経細胞と神経細胞集団の活動を区別して記録することが可能であることを明らかにした。これらを組み合わせてもちいることにより、単一神経細胞、神経細胞集団、脳血流の3種類の信号を同時に記録することが可能になった。広域イメージングにおいては、カルシウム信号と脳血流の信号とを精確に分離して測定することも必要である。そこで、上記に加えて更に複数波長を用いた観察による信号分離システムを導入した。さらに加えて、神経細胞集団と脳血流を繋ぐ存在であると考えられているアストロサイトについても解析を行い、アストロサイトが感覚入力に応答したカルシウム活動を起こすことを明らかにした。この研究には、研究領域内での連携を通じて赤色のカルシウム感受性蛍光タンパクR-CAMP2を導入し、使用した。また、マウスでのカルシウムイメージングに、ヒトの機能的MRIで提唱されている手法を適用し、安静時脳活動の動的なネットワーク構造を解析した。この手法を精神疾患モデルマウスに適用するため、ケタミンを用いた薬理モデルでの脳活動計測を開始した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の目標は、単一神経細胞、神経細胞集団、脳血流の3種類の信号を同時に記録する新しいい広域イメージング手法を開発することであったが、これを達成した。加えて、神経細胞集団と脳血流を繋ぐアストロサイトの活動の性質についても、領域内連携を通じて明らかにすることが出来た。広域イメージングについては更なる技術改良も行っており、当初の計画以上に研究が進展していると言える。
今後は、開発した、単一神経細胞、神経細胞集団、脳血流の3種類の信号を同時に記録する新しいい広域イメージング手法を改良し、測定精度の向上を図る。また、これを利用したマウス脳活動のデータベース作成に取り組む。特に精神疾患モデルでのデータベースを充実させるため、ケタミン投与以外の精神疾患モデルとして自閉症モデルマウスなどでのイメージングを行う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件)
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