研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
18H05120
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
深澤 有吾 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60343745)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シナプス結合 / 微細構造 / 電子顕微鏡 / 構造相関 |
研究実績の概要 |
神経細胞間の情報伝達を担うシナプス伝達の特性は、神経細胞の組合せ(シナプス結合種)により異なると同時に、シナプス前後細胞の活動履歴によりダイナミックに変化する。本課題では、最新の電子顕微鏡観察技術と画像解析技術を組み合わせて、シナプス結合の微細構造のダイナミズムを精緻且つ定量的に評価する解析系を確立し、「シナプス結合の構築則」を明らかにする。そしてこの構築則に基づいて「シナプス関連分子のシナプス構築における役割」を同定すると共に、「精神疾患モデルマウスにおける新たなシナプス構造異常の検出」も目指す。H30年度に実施した実験と結果は以下の通り。 ①シナプス内微細構造間相関解析法の強化 集束イオンビーム搭載型走査型電子顕微鏡を用いた定量的微細構造の計測は、シナプス前構造のシナプス前膨大部の体積、シナプス小胞の数、ミトコンドリアの数と体積、シナプス後構造では、シナプス後膜の特化領域の面積、スパイン体積、スパイン装置と粗面小胞体を合わせた体積のみであった。そこで、シナプス小胞の3次元空間配置と他の微細構造との相対的配置関係を定量分析・評価する手法を確立した。更に、スパイン装置と疎面小胞体を区別してその体積と表面積を計測する様にした。「画像解析プログラムの開発」については、AI技術を用いた画像情報の自動抽出法の開発に着手した。 ②シナプス内微細構造相関解析法の応用 上記観察計測手法で取得した微細構造情報を元に、微細構造間の相関関係を評価することで、シナプス結合種間に共通してみられる構造則と結合種固有の構造特徴の両方を導出することに成功した。①Septinサブユニット欠損(KO)マウス、②CaMKIIa kinase-dead ノックイン(KI)マウス、及び、③Neuroligin-3 R451C KIマウスの解析を終え、各動物に固有のシナプス結合構造の異常を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で予定した実験の全てを年度内に終え、年度内に新たに生じた課題も追加して解析することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に得られた結果を論文としてまとめると共に、予定していた実験「脳組織の急速凍結法と電子顕微鏡試料作成法の確立」を実施する。具体的には、電子顕微鏡レベルの生物試料の構造解析に一般的に用いられる、アルデヒド系固定剤により処理した試料と高圧凍結法を利用した物理固定 (氷包埋) 法により作製した試料で構造解析を行い、その計測結果を比較する。この結果、より生体内のシナプス結合の構造を反映した情報が得られると共に、これまで取得した化学固定処理した組織から得た構造情報を補正するための情報が得られる。生体内のシナプス構造を反映したデータをモデリングを専門とする研究者と共有し、シナプス伝達現象の分子動態モデルを実施する。
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