公募研究
睡眠覚醒状態変化に伴い、脳の情報処理は大きく変動する。特に、覚醒状態からノンレム睡眠、ノンレム睡眠からレム睡眠へと状態変化する際に脳波レベルでも大きな変化が見られる。本研究では、睡眠覚醒状態変化時に視床下部ー中隔核ー海馬間の機能連関がどのように変化するのかについて明らかにすることを目的としている。既に視床下部のメラニン凝集ホルモン(MCH)産生神経が中隔核と海馬に密に投射していることを見いだしている。睡眠覚醒状態変化に応じたMCH神経の活動を記録するために、MCH神経特異的にカルシウムインジケータであるGCaMP6を発現させ、カルシウムシグナルを用いて活動記録を行った。光でMCH神経全体の活動を記録できるファイバーフォトメトリーを適用し、脳波筋電図と同時に記録したところ、MCH神経活動はレム睡眠中と覚醒中に高まることが明らかになった。さらに、単一細胞レベルでの活動を明らかにするために、超小型顕微鏡nVistaを用いてMCH神経の活動記録を行った。脳波筋電図と同時に神経活動を記録したところ、覚醒時に活動するMCH神経、レム睡眠時に活動するMCH神経、覚醒時とレム睡眠の両方で活動するMCH神経の3種類があることが分かった。3種類のMCH神経は視床下部にランダムに存在しており、レム睡眠中に活動するMCH神経が比較的多いことも明らかとなった。これら3種類のMCH神経の睡眠覚醒調節における機能について、睡眠覚醒状態依存的光遺伝学による抑制を用いて検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
MCH神経の活動が、睡眠覚醒状態変化に伴いどのように変化するのかについてファイバーフォトメトリーと脳波筋電図を用いた記録によって検討したところ、覚醒時とレム睡眠時の両方で活動することを明らかにした。さらに、単一細胞レベルでの活動について、超小型顕微鏡nVistaを用いて記録したところ、MCH神経には覚醒時に主に活動する神経、レム睡眠時に活動する神経、覚醒時とレム睡眠時の両方で活動する神経の3種類あることを突き止めた。これらの結果は、MCH神経が摂食行動や睡眠覚醒という異なる生理機能に関わっているというこれまでの研究を支持する結果であり、今後3種類の生理的役割の解明によって、さらに詳細に理解が進むものと思われる。
超小型顕微鏡nVistaを用いて記録したところ、MCH神経には覚醒時に主に活動する神経、レム睡眠時に活動する神経、覚醒時とレム睡眠時の両方で活動する神経の3種類あることを突き止めた。今後は、睡眠覚醒状態依存的光遺伝学による抑制によって、それぞれの神経がどのような生理機能を担っているのかについて明らかにしていく。また、中隔核と海馬においてMCH神経活動が変化したときに神経活動がどのように変化するのかについても、電気生理学的解析を用いて明らかにしていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 6件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件、 招待講演 20件)
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