公募研究
動物は、様々な情報を中枢神経回路において適切に処理することによって、刻々と変動する環境に適応している。本研究では、線虫をモデルとして、特定の刺激に対していつも同じ行動をとる(頑健性がある)場合と、確率的に行動を変化させる(柔軟な)場合とでどのように情報処理に違いがあるのかを明らかにすることを目的としている。(1)これまでデータ取得・データ処理手法などを開発してきた4Dイメージングシステムを用いて、無麻酔下において刺激に依存した頭部全中枢神経細胞の活動を測定した。これによって、細胞名を識別したデータを多数得ることができた。(2)上記で得られたデータに基づいて、神経活動の因果関係の推定をすることによって、機能的な神経回路を同定することを目指した。具体的には、特定の神経細胞の活動を、その神経細胞にシナプス結合を作っている全ての神経細胞の活動から、機械学習(ランダムフォレスト回帰)によって予測できるかを調べると、多くの場合に予測できることが明らかになった。このことは、それぞれの神経細胞の機能的な入力を推定できる可能性があることを示唆している。(3)上記の神経活動予測を多数の個体で行うと、シナプス結合を作っている神経細胞の中で、下流に影響を及ぼしている神経細胞には、個体間の差が大きいことが示唆された。(4)線虫の頭部神経細胞のうち、3対の神経細胞だけで、カルシウムセンサーを発現している線虫について、測定条件を確立した。
2: おおむね順調に進展している
(1)線虫の頭部中枢にある全ての神経細胞の活動を測定し、その神経細胞のアノテーションをしたデータを多数得ることができた。(2)機能的な神経回路を推定するために、統計学的な手法をとりいれた。これにより、構造的な神経回路が共通であっても、機能的な神経回路には個体差が大きい可能性があることが示唆された。(3)少数の神経細胞でカルシウムセンサーを発現する線虫の活動を、4Dイメージングシステムを用いて、長時間測定することが可能になった。
(1)神経細胞のアノテーションが完全にはできない個体が多いので、その精度を上げることを目指す。(2)機能的な神経回路の解析を進めるとともに、行動を制御するために重要な神経細胞の推定を、統計学的に明らかにする。(3)少数の神経細胞でカルシウムセンサーを発現する線虫を用いて、それらの神経細胞間の機能的なつながりを解析し、個体間の違いを明らかにする。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Sci Rep
巻: 8 ページ: 8392
10.1038/s41598-018-26694-w
http://www.biology.kyushu-u.ac.jp/~bunsiide/