学習に伴う機能的神経回路の再編と保存を明らかにするために、視覚刺激と運動出力の関係を転換させる再学習の実験系を立ち上げ、神経活動の記録を行った。あらかじめ、縦縞でレバーを押し、横縞でレバーを引くということをラットに繰り返しトレーニングした。その後、【縦縞→レバーを押す、横縞→レバーを引く】の関係性を10°刻みで、連続的に徐々にシフトさせた。比較的高い正答率を維持した(正答率のシフト耐性)が、この関係性が逆転する角度(45°シフト)近くになると急激に正答率が低下した。また、この正答率のシフト耐性は、連続的にシフトさせる場合だけでなく、ランダムにシフトさせた場合においても、その程度は弱いながらも観察された。このランダムなシフトで観察されるシフト耐性は、学習後の神経回路にもともと備わっている、入力の多様性に対する柔軟性を表していると考えられる。一方、連続的なシフトで観察されるシフト耐性は、この入力の多様性に対する柔軟性に、再学習による柔軟性が加わっていると考えられる。ここで、連続的なシフトの実験においても一日の連続した記録時間の中で観察されることであり、すでに、この視覚と運動の関係性の連続シフトの間に神経活動を記録したので、今後、詳細に解析する予定である。 また、神経活動依存的なE-SAREプロモーターの下流で、タモキシフェンで調節可能なCre-ERタンパク質を発現する遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスAAVと、Cre依存的にChR2を発現する遺伝子を含むAAVを一次視覚野にインジェクションした。活動依存的に特定の神経細胞に光活性化タンパク質であるChR2を発現させ、青色光照射によって神経活動を操作する実験も行った。
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