研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石北 央 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00508111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工光合成 / photosystem II / プロトン移動 / 電子移動 / 水分解・酸素発生 |
研究実績の概要 |
植物などが行う天然光合成における水分解酸素発生反応は蛋白質photosystem II (PSII)で行われる。PSII水分解反応機構を理論化学的手法でアプローチする際には、この応募者も含めて、Mn4CaO5部位の量子化学的手法から水分解反応中間体のエナジェティクスを解析することで迫ることがほぼ定石であった。結果として、既に多くの水分解反応機構が提唱されているが、その中から妥当な反応機構を確定するには、裏付けに必要な「決定打」が必要である。水分解反応機構が妥当であるなら、「基質水分子の供給経路」(基質)、「酸素分子の排出経路」(主生成物)、「プロトン移動経路」(副産物)の3つの経路はMn4CaO5中の反応サイト1点で交わるはずである。この条件こそ、反応機構を確定するための「決定打」と本研究提案者は考えた。本研究では、PSII蛋白質全体の構造情報を最大限に有効利用すべく、分子動力学的手法と量子化学的手法を融合し「基質水分子の供給経路」、「酸素分子の排出経路」を解析・同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究成果をまとめて多数の論文発表を行った。それらはMn4CaO5錯体および電子移動経路の電位に関するもの(Mandal et al., J. Phys. Chem. Lett. 11 (2020) 249)、励起エネルギー移動(Tamura et al. J. Phys. Chem. Lett. 10 (2019) 7623)、さらに分子動力学計算におけるプロトン移動と水分子移動の解析(Sakashita et al. Phys. Chem. Chem. Phys. (2020) in press)等、当初の目標として掲げた光合成反応の全領域にまたがり、PSII光誘起水分解反応を統合的に理解するという目標を達成している。また研究成果をGordon Research Conference(2019年7月)で講演した。
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今後の研究の推進方策 |
反応中心における電荷分離反応と水分解反応の関連は、明らかになっていないものの、おそらく存在すると考えられる。その謎に迫るべく、電子移動反応尾解析にも注力する。
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