研究実績の概要 |
完全メチル化シクロデキストリンと各軸長のピレン軸を持つ[3]ロタキサンを用いて、完全メチル化シクロデキストリンのスライド運動を熱刺激により活性化させることで発光色が変化することを明らかにしている。まず、各軸長の[3]ロタキサンの熱活性化スライド運動について温度可変型H NMRスペクトルを用いて考察しており、中軸長の[3]ロタキサンが室温下においてほぼ完全にピレンステーションが完全メチル化シクロデキストリンによって被覆されている一方で、高温では完全メチル化シクロデキストリンのスライド運動によって非被覆状態のピレンステーションの割合が増加したことを明らかにしている。また、短軸長の[3]ロタキサンでは、軸長の短さにより完全メチル化シクロデキストリンが十分にスライドせずピレンステーションは被覆されたままであり、長軸長の[3]ロタキサンでは、軸の長さによりエチレングリコール鎖上に環状分子が存在する確率が増加することで室温条件下においても非被覆状態となっていることが明らかとなった。中軸長の[3]ロタキサンのように温度によって被覆状態と非被覆状態を切り替えることが可能となる性質を利用し、熱刺激による発光色変化へ研究を展開した。ピレンは通常、紫外光照射により青色のモノマー発光を示すが、N,N-ジメチルアニリンのようなドナー性の分子存在下ではより長波長のエキシプレックス発光を示すことが知られている。その特性と[3]ロタキサンの温度による被覆、非被覆状態の切り替えを利用し、被覆状態のピレンステーションのモノマー発光と非被覆状態のピレンステーションのエキシプレックス発光の割合を変化させることで、熱刺激による発光色変化を達成した。
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