研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05160
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70335082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光エネルギー変換 / 光合成 / 光収穫系複合体 / 反応中心複合体 / LH1-RC / エネルギー移動 / 光電流 |
研究実績の概要 |
エネルギー密度の低い太陽光を利用した光エネルギー変換システムの構築のためには、効率の良い光収穫系と光触媒系の連結が必要不可欠である。本研究課題では、光合成系での光収穫系1-反応中心コア複合体(LH1-RC)を用い、その光吸収領域を拡張するために蛍光色素を結合した「バイオハイブリッドLH1-RC」を作成し、その光捕集系がいかに光触媒部分(RC)と連動するかを明らかにする。 今年度は(1)諸種の蛍光色素(Alexa647/680/750, ATTO647N)をLH1-RCのリジン側鎖に結合したバイオハイブリッドLH1-RCの作成、(2)蛍光色素からLH1-RCへのエネルギー移動計測、(3)蛍光色素の励起によるLH1-RCでの電荷分離反応の収量の計測、(4)電極上での光電変換能の向上について取り組んだ。 (1) 蛍光色素は主にLH1部位に約10個結合していることがゲル電気泳動(SDS-PAGE)および吸収スペクトルからわかった。(2) フェムト秒過渡吸収スペクトル計測から、蛍光色素からLH1に数ピコ秒から17psの時間領域でエネルギー移動していることが認められた。(3) 蛍光色素励起により、RCでの電荷分離の量子収率の著しい増大が認められた。(4) 電極上にバイオハイブリッドLH1-RCを固定化し光電流計測を行ったところ、蛍光色素励起による著しい光電流発生がみとめられた。蛍光色素の励起波長における照射光強度依存性から、光捕集機能の定量化を試みたところ、約8倍の光吸収能の増大が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に従い、諸種の蛍光色素をLH1-RCに結合させたバイオハイブリッドLH1-RCの作成に成功し、さらにそのエネルギー移動評価、電荷分離の量子収率の計測、蛍光色素励起による光電流計測の評価を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光色素による光収穫能の向上の定量的評価における理論的裏付けを得る。また、より精度良く光電流を計測するために、電極からRCへの電子移動速度を速めることで、より大きな光電流量を得る必要がある。そのため、電子伝達タンパク質のcytochrome cを電極上に高濃度で集積することを試みる。また、シトクロームサブユニットを有するLH1-RC(T. tepidum由来)のものについても検討を行う。
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