研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05169
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
定金 正洋 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10342792)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水の酸化触媒 / ポリオキソメタレート / ルテニウム |
研究実績の概要 |
太陽の光を使って水から水素の合成や二酸化炭素の還元を行う人工光合成において、効率のよい水の完全酸化触媒を開発することは最も重要な課題の1つです。私は、より効率の高い水の酸化触媒を開発するために、① 複数のRuを分子骨格中に含んだ新しいポリオキソメタレート分子の合成、② 新しいRu-W酸化物粒子の合成、③ ポリオキソメタレート分子やRuW酸化物粒子のFTO電極上への修飾法の開発を行っています。 初年度である平成30年度は、③ ポリオキソメタレート分子やRuW酸化物粒子のFTO電極上への修飾法の開発を中心に行いました。その結果FTO電極の上に高い水の酸化触媒活性を示す酸化ルテニウムを修飾する方法を見出しました。原料となる塩化ルテニウムを水の中で1度水熱合成してできる酸化ルテニウム粒子をFTO上に塗布し乾燥させた後、適切な温度で加熱する事が高い水の酸化触媒活性(酸化剤としては電圧を利用)に重要であることを見出しました。 これと平行して、インドのデリー大学のHussain教授とともに水の酸化触媒活性の高いコバルトを分子内に7つ含む新規ポリオキソメタレートの合成および構造解析(単結晶構造解析、元素分析、赤外分光、および高分解能質量分析)に成功しました。この化合物の水の酸化触媒活性(酸化剤として4価のセリウムを用いた)も測定しましたが、活性は同量のコバルトイオンだけを触媒として用いたときより低いという結果に終わりました。しかし、この化合物の合成および構造解析に成功したことは、今後ルテニウムを多数含んだ化合物の合成および構造解析のために役に立つと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FTO電極の上に高い水の酸化触媒活性を示す酸化ルテニウムを修飾する方法を見出しました。原料となる塩化ルテニウムFTO電極上で酸化ルテニウムに変換するのではなく、塩化ルテニウムを水の中で1度水熱合成してできる酸化ルテニウム粒子合成し、その後FTO上に塗布し乾燥させた後、適切な温度で加熱する事で高い水の酸化触媒活性を示すFTO電極が作成できることを見出しています。 更に、水の触媒活性は低かったが、コバルトを分子内に7つ含む新規ポリオキソメタレートの合成および構造解析に成功している。この化合物の合成手法は、ルテニウムを複数分子内に含有した新規ルテニウム含有ポリオキソメタレートの合成に今後つながると期待してます。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず昨年度に開発した酸化ルテニウム修飾FTO電極を粉末X線回折、ラマン分光、操作型電子顕微鏡、および透過型電子顕微鏡を用いて詳細な構造解析を行います。それに加えて、① 複数のRuを分子骨格中に含んだ新しいポリオキソメタレート分子の合成および② 新しいRu-W酸化物粒子の合成を行っていきます。 ① 複数のRuを分子骨格中に含んだ新しいポリオキソメタレート分子の合成に関しては、Ruを2つ含んだ新規ポリオキソメタレートの合成、構造解析及び水の酸化触媒活性の検討を行います。それに加えてルテニウムを4つ含んだポリオキソメタレートのルテニウムを有機配位子で修飾した化合物の合成および水の酸化触媒活性の検討を行います。 ② 新しいRu-W酸化物粒子の合成に関しては、これまでに用いていないポリオキソメタレートとルテニウム原料の組み合わせを検討します。
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