研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05174
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
天尾 豊 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (80300961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 二酸化炭素還元 / 生体触媒 / 人工補酵素 / 半導体光触媒 / 可視光応答 |
研究実績の概要 |
本提案では,本新学術領域の骨子である「本質的かつ生産的な生物-化学融合領域の創成」を実現するために,国内外ではほとんど進められていない有機色素分子,半導体光触媒,生体触媒材料をそれぞれの研究領域の垣根を超えて複合化させ,それぞれの欠点を補うとともに特徴を最大限活用できる新規な二酸化炭素の光還元に資する材料構築を目的としている.本年度は酸化チタン(半導体光触媒)の光触媒機能とギ酸脱水素酵素(生体触媒)とを組み合わせた光駆動型二酸化炭素還元に基づくギ酸生成系を構築した.具体的には酸化チタン,メチルビオローゲン,トリエタノールアミン及びギ酸脱水素酵素をピロリン酸ナトリウム緩衝液に加え,気相を二酸化炭素ガスで充填し,反応温度30℃で400 Wキセノンランプを照射した.その結果,光照射時間とともにギ酸生成が見られた.さらにこれまで広く可視光増感剤として利用されてきた水溶性亜鉛ポルフィリンを用いた従来の系と比較しても効率的にギ酸生成が達成できた.これらの成果は,生物-化学融合領域の創成に資する成果であり,すでに国際誌に速報として掲載された(Chem. Lett. 2018, 47, 1505).その他、可視光応答型光触媒と二酸化炭素還元機能を有する生体触媒であるギ酸脱水素酵素とを複合化した「可視光応答型光触媒電極と生体触媒との複合化による極低バイアス二酸化炭素還元」の構築に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本新学術領域の骨子である「本質的かつ生産的な生物-化学融合領域の創成」を実現するために酸化チタン(半導体光触媒)の光触媒機能とギ酸脱水素酵素(生体触媒)とを組み合わせた光駆動型二酸化炭素還元に基づくギ酸生成系をいち早く構築し,国際誌に速報として掲載されたため.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は化合物半導体を用いた光エネルギー利用技術と生体触媒を用いた二酸化炭素の分子変換との連携により,可視光エネルギーを利用し,半導体光触媒による水の光分解と生体触媒による二酸化炭素還元系を連動させた水を電子源とした二酸化炭素還元に基づくギ酸生成系創製を目指す.加えて,有機色素分子,半導体光触媒,生体触媒材料を複合化させ,それぞれの欠点を補うとともに特徴を最大限活用できる新規な二酸化炭素の光還元に資する材料として,ルテニウム錯体色素担持半導体光触媒,1,1'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウム塩(4,4'-BP)及びギ酸脱水素酵素とを複合化し,高価かつ効率の悪いNAD/NADHの酸化還元系を必要としない新たな二酸化炭素の光還元系の構築を目的とする.2019年度は分子光触媒および半導体光触媒のハイブリッド化による高効率・高選択的な二酸化炭素還元光触媒および光電極の構築に大きく貢献する.
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