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2018 年度 実績報告書

近赤外光利用型天然光化学系IIの構造と機能

公募研究

研究領域光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製
研究課題/領域番号 18H05175
研究機関兵庫県立大学

研究代表者

菓子野 康浩  兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (20221872)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード光化学系II / 光合成的酸素発生反応 / クロロフィルd / 天然光合成
研究実績の概要

本研究では、酸素発生型光合成生物でありながら、特殊な光合成色素であるクロロフィルdによる光合成を行う海洋性シアノバクテリアAcaryochloris marinaから光化学系II(系II)を酸素発生活性を保持した健全な状態で精製することによりその酸素発生反応機構を詳細に解析し、原子レベルの構造をも明らかにすることを目的としている。
系IIを健全な状態で、迅速に精製するために、まず形質転換法の開発とともに、系IIのサブユニットにHis-tagを遺伝子工学的に導入した株の作出に取り組んだ。A. marinaの薬剤耐性を検討した結果、スペクチノマイシンが選択マーカーとして有効であった。次いで、系IIの3種のサブユニットのC末端にHis-tagを遺伝子工学的に導入するために、それぞれのコンストラクトプラスミドを作成した。そして、これらのプラスミドを用い、各種の検討を行い、エレクトロポレーション法による形質転換の結果、薬剤耐性のある細胞が現れた。完全変異化にはまだ至っていない。並行して、野生株を用い、系IIの含量が高く、より迅速に増殖する培養条件を検討した上で、カラムクロマトグラフィーによる精製を進めた。界面活性剤により可溶化し、Q-SepharoseやDEAE-Sepharose等による分離を行うと、膜表在性の系IIサブユニットであるPsbOが結合した状態の系IIを分離することができた。しかし、タンパク質組成を詳細に検討すると、光化学系I(系I)の少なからぬ混在が認められた。系Iと系IIの分離のために各種の試みを行ったところ、PsbOが容易に遊離してしまうという特徴が認められた。他の生物種では遊離しない条件でも容易に系IIから遊離してしまうことから、A. marinaのPsbOは特異な構造的特徴を有することが推察された。3次元結晶化のスクリーニングを進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一部のPsbOの遊離が認められるものの、3次元結晶化のスクリーニングに取り組んでいるため。ただし、まだ結晶が得られる条件は見出していない。

今後の研究の推進方策

研究計画に大きな変更はないが、結晶化条件や生成条件をより精密化するために、複合体の状態を検証する目的で負染色後に電子顕微鏡による画像解析を組み込む。すでに外部の研究者の協力を得て、この方法を組み込んだ精製法の改善を進めているので、今後もこの手法を活用して、より迅速に目標を達成する方針である。
生成過程でPsbOの遊離が認められるので、そのタンパク質構造上の原因の探求と、遊離しにくい生化学的条件の確立が必要と考えられる。しかし、PsbO自体は酸素発生反応そのものに直接関わっていない可能性があるので、Mn原子の結合量を確認しつつ、PsbOにこだわらない構造解析も視野に入れている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 近赤外光利用型天然光化学系IIの構造と機能2019

    • 著者名/発表者名
      菓子野康浩
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 3 (3) ページ: 259-262

  • [学会発表] シアノバクテリアAcaryochloris marinaの光化学系II2019

    • 著者名/発表者名
      前田皐臣、井上(菓子野)名津子、小谷弘哉、新澤(伊藤)恭子、山下栄樹、伊福健太郎、菓子野康浩
    • 学会等名
      光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光 ― 物質変換系の創製 「第2回公開シンポジウム」

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公開日: 2019-12-27  

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