研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05178
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水分解光触媒 / 高活性化 / 助触媒 / 合金 |
研究実績の概要 |
水分解光触媒の実用化に向けた、それらの高機能化に関する研究が盛んに行われている。助触媒の制御はそのうちの一つであり、近年では、その粒径のみならず、合金化による高機能化も数多く取り組まれている。しかしながら、そうした助触媒への異原子ドーピング効果について深い理解を得て、それにより、高機能化に対する明確な設計指針を確立するためには、助触媒の化学組成が厳密に制御された光触媒を対象に研究を行うことが不可欠である。本研究では、液相合成された精密合金クラスターを前駆体に用いることで、最先端光触媒の一つであるBaLa4Ti4O15上に、金25量体クラスター(Au25)の一つのAuをPdもしくはPtに置換した、Au24Pd及びAu24Ptを精密に担持させることに成功した。そうして原子精度にて制御された助触媒の担持された光触媒について研究を行うことで、助触媒の異原子ドーピングに関して、次の3つを明らかにした; 1) Pdは金属クラスター表面に位置し、Ptは金属クラスタ-と光触媒の界面に位置する、2) Pdドーピングは水分解活性の低下、Ptドーピングは水分解活性の向上を誘起する、3) こうしてPdとPtの間でドーピング効果が逆となることには、異原子のドープ位置が大きく関係している。さらに、PtドーピングとCr2O3膜による助触媒表面保護を組み合わせると、Ptドーピングだけの光触媒よりも、さらに高活性かつ高安定性を有する光触媒を創成することが可能であることも明らかにした。これらの知見は、水分解光触媒の実用化に向けた、高活性かつ高安定性を有する水分解光触媒創成に対する明確な設計指針に繋がると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は 1)助触媒クラスターを厳密に担持する方法を確立する,2)可視光応答型水分解光触媒における助触媒クラスターの化学組成及び電子/幾何構造と水分解活性の相関を明らかにする,3)高活性化に適した金属クラスターを新たに設計・合成し,それらを助触媒として活用する,4)可視光応答型水分解光触媒を高活性化する上での明確な設計指針を確立すると共に,実際に,高活性な可視光応答型水分解光触媒を創出するであり、初年度の研究により、1)と2)を達成した。これは当初の計画通りであるため、本研究課題は順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
担持金属クラスターの電子/幾何構造の解明,高活性化へのキーファクターの解明,及び更なる高活性化の創出に取り組む。具体的には,電子/幾何構造が光触媒活性に与える影響について知見を得るため,担持金属クラスターの電子/幾何構造を明らかにする。電子構造については,拡散反射分光などを利用する。常温下での測定では,振動励起に起因して,多くの遷移が重なった複雑かつブロードなピークを有するスペクトルのみが得られる。本研究では,低温(〜10 K)にて測定を行うことで,スペクトルのブロード化を抑え,電子構造の詳細の観測を実現する。また,広域X線吸収微細構造解析により,担持金属クラスターの電荷状態の詳細や幾何構造に関する情報を得る。こうした放射光実験については,それらを得意とする研究者と連携しながら研究を進める。また、以上の実験にて得られた情報をつきあわせることにより,担持金属クラスターの化学組成及び電子/幾何構造と水分解光触媒活性の相関を明らかにするとともに,そうした情報より,活性向上に対するキーパラメータを炙り出す。こうして得られた知見をもとに,高活性化に適した合金クラスターを創案・合成し,再度,一連の実験を行う。これらの一連の実験を繰り返すことで,可視光応答型水分解光触媒の飛躍的な高活性化を実現する。
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