研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H05183
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
池田 茂 甲南大学, 理工学部, 教授 (40312417)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 化合物半導体 / バルク結晶 / 単結晶 / 光電極 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
半導体材料におけるバルク物性は半導体内に生成したキャリアの拡散長を決定する因子であり、表面での触媒プロセスを考える以前に、キャリア拡散長が十分に大きい半導体材料を得ることが重要である。多元素化合物では、構成元素の不定比性が欠陥準位の種類や量を決定し、キャリア拡散長はそれらの物性に強く依存するため、光カソードとして高機能化するには、これらの欠陥を定量的に制御することが必要となる。このような観点から、本研究では、計算科学や熱力学理論から予測される欠陥構造とその制御方法に基づいて、バルク結晶をベースとする化合物粉末および薄膜を作製することで、光物性を決定する重要な因子であると考えられる結晶内のバルク物性が精密に制御された、高機能な光触媒および光電極を得ることを目的としている。今年度は、酸素発生光触媒であるBiVO4粉末へのZrドーピング効果(論文(1))、p型化合物光電極新材料であるCuSbS2のバルク結晶、単結晶の合成とその物性評価、Cu2ZnSnS4薄膜光電極の水素発生機能の向上、CuGaS2薄膜光電極によるCO2光還元の実証、酵素-光触媒ハイブッド電極によるCO2還元反応などの成果を得、国際誌への論文投稿8件および、関連研究に関する国内および海外での成果発表11件(招待講演3件を含む)を行った。また、対外発表まではいたらなかったが、価電子帯ポテンシャルの浅いp型半導体材料について、異相を含まないバルク結晶を得る条件・合成法を新たに見出した。なお、論文2件については、新学術領域研究の領域内の先生方との共同研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、光触媒、光電極の高機能化に関して、国際誌に掲載される多くの研究成果が得られた。特にこれらの研究成果の多くが領域内を含む国内外との研究者との共同研究であり、新学術領域研究として実施したことで達成された成果であると考える。また、本研究の主題である計算や熱力学的予測に基づいた光電極作成については、CuSbS2のバルク結晶、単結晶の合成を実現したほか、価電子帯ポテンシャルの浅い新たなp型半導体材料について、異相を含まないバルク結晶を得る条件・合成法を新たに見出すことができた。このまま研究を進めれば、今後1年間で、組成比制御や単結晶へ展開し、光電極としての機能評価まで実施できると思われ、現状では順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計算科学・熱力学理論に基づく新材料探索、薄膜作製、バルク・単結晶合成、キャラクタリゼーション、光電極への応用など、前年度から継続する研究を進める。このような検討を重ねることで、高機能な水素発生光カソードが得られれば、pnヘテロ接合を形成させた上に、新学術領域研究領域内の分子系光触媒のグループと協働で適当な候補となる分子系触媒を固定化して、水素発生速度の向上および選択的な酸素還元による過酸化水素生成に関する検討を開始する。また、別途、領域内共同研究としてp型化合物半導体表面あるいは、表面に堆積させたn型半導体極薄膜上に二酸化炭素発生のための分子触媒を固定化して、二酸化炭素還元反応への応用を行う。
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