本研究においては、2020年度に東アジアとアフリカを結んだ人とモノの流通経路に着目し、ナイジェリア人と中国人の関係性に焦点をあてた調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって前提となるフィールドワークを実施することが不可能となった。そのため、繰越申請を行い、2022年度まで研究期間を延長した。 2022年度には日本およびナイジェリアにおいて水際対策が緩和されたことを受け、はれて2022年9月にナイジェリアにおけるフィールドワークを行うことができた。主にラゴスにおいて、チャイナタウンおよび教育機関(ラゴス大学中国語学科および孔子学院)の調査を行うとともに、エヌグ州において地方に広がる中国人ネットワークの調査を行った。その結果として、中国=ナイジェリアの人やモノの移動について考察するための貴重なデータを収集することができた。特に、中華料理の受容を扱った調査では、アフリカと東アジアを結んだモノの流通の好例として料理に注目し、データの収集および分析を行った。ナイジェリアにおいて中華料理は、ナイジェリア人中間層向けのファストフード店から高所得者向けの高級料理店、在ナ中国人向けの食堂など、様々な階層に普及している。さらには、現地で発明された料理やローカルな料理の一部となったものまで、「中国料理」の枠には収まらない多様性が生まれている。調査を通じて、グローカル化という言葉では単純には表せない、多元的なモノの移動、受容の過程を捉えることができた。その成果については、研究協力者とともに今後論文として発表する予定である。 一方で、中国において厳格な水際対策が継続した結果、中国における協働調査は実施することができずに研究期間を終えることとなった。同国における調査は、今後の課題として機会をみて再挑戦したい。
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