研究領域 | グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立 |
研究課題/領域番号 |
19H04514
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張 雲 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (70447613)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国内エピステミック・コミュニティ / 国内知識共同体 / 相互認知 / 米中関係 / 日中関係 / 権威主義 / 知のブローカー / 政策起業家 |
研究実績の概要 |
初年度の2019年度には、国内エピステミック・コミュニティ(National Epistemic Communities)と政策協調、そして国際関係における相互認知の理論について豊富な既存研究を全面的に検証する。特に、権威主義体制におけるアイデアと政策の関係についての文献をレビューし、異なる政治体制における国内エピステミック・コミュニティの比較優位性と国際関係における相互認知再形成との関連の理論分析枠組みを構築した。 実証研究としては、冷戦後における米中関係の重大な危機発生後に中国の国内対米認知の再形成の二つの事例研究を行った。([米中戦略的パートナーシップ] と「中国平和台頭論」の定着)中国台頭のようなグローバル秩序に影響を及ぼす重大なできことは従来の相互認知の均衡の崩壊に繋がる。 本研究の中間成果を積極的新学術領域研究『グローバル関係学』の報告会に参加し、重要なフィードバックをもらった。代表者は、Trilateral Cooperation Secretariat、南京大学、The Sejong Institute、ミャンマー戦略国際問題研究所との国際会議などで一部の研究成果を発表した。さらに、研究代表者は研究のプロセスの中で、国内エピステミック・コミュニティと認知再形成の枠組みで朝鮮半島非核化をめぐる「六者協議」とミャンマー政治転換の事例にも極めて有用であることとの新発見があった。本研究の中間成果に関連する学術論文を投稿した。 また、新型コロナウィルスのパンデミックを受け、代表者は知識共同体と認知再編の枠組みを援用し「知識・認知共同体と東アジア公共衛生ガバナンス:日中協力の必要性と展望」の学術論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度2月、3月に予定されていた米国などでの聞き取り調査と研究発表は、新型コロナウィルス感染拡大のため、取りやめになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は主に日中関係が大きく変動した二つの時期である2003-2005年、2010-2013年の事例を国内知識共同体形成の成否の軸で実証研究を行う。(「対日新思考」と「新日中友好21世紀委員会」)また、昨年度、実施できなかった米国での調査を実施する予定である。 研究成果を論文にし、日本国際政治学会、中国、米国の研究機関で発表する。修正した後の論文を国際誌に投稿する予定である。最終的に、本研究の全体の成果を単著として出版すると考える。さらに、今後の展望として研究で日中米関係以外の事例も本研究の理論発展に大きく寄与できることが分かり、それに基に、ミャンマーの政治移行、イラン核合意交渉、六者協議の相互認知の再形成などの事例研究に取り込みたい。さらに、新型コロナウィルスのパンデミックを受け、代表者は国内・国際知識共同体の連動とグローバルガバナンスとの関連性の研究にも挑戦したい。これによって、今回の研究は日中、米中関係のみならず、グローバル課題の解決に向け国内知識共同体と政策との関連性への理解を深めることができる。
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