研究成果としては、論文としての成果は出版できなかったものの、編著の一章として本研究プロジェクトに関する研究成果を講評したほか、4本の学会発表も実施した(うち1本は国際学会である)。本プロジェクト終了時にも研究成果をまとめる作業は続いており、今後も本研究の成果を発信する予定である。また、それと同時に、本研究プロジェクトを拡大し、今後の調査へとつなげるための調査も実施した。というのは、2021年にミャンマーではクーデターが発生し、政治的な状況が大きく変わったからである。本研究プロジェクトはミャンマー内戦についてであり、少数民族を主体とする武装勢力を対象とするものであった。なぜなら同内戦は、主要民族ビルマ人を中心とする政府に対して、少数民族が政治的自由の拡大を求めて反旗を翻したものだからである。しかし、クーデターによって民主的に選ばれた政府が転覆した後、政治は大きく混乱した。主要民族ビルマ人の中でも武装勢力を組織する動きも見られるようになった。そうした状況を調査するため本来の調査地であるタイ北部だけではなく、ミャンマーの国境を接する別の地域(タイの南部、ラノーン県)でも調査を行った。その成果からは、コロナ禍で国境が閉鎖されているにもかかわらず、人の移動がみられ、国境には多くの越境避難民や出稼ぎ民が発生していることが確認できた。
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