研究領域 | グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立 |
研究課題/領域番号 |
19H04517
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
東 聖子 近畿大学, 国際学部, 講師 (00735102)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パンジャーブ / スィク教 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
カナダおよびドイツにてスィク教寺院を訪問し、いずれにおいても、集う人々のローカルな文脈に即した寺院運営が行なわれていた。一方、トランスナショナルではなく、トランスローカルと言うに適したネットワークの結節点として寺院が存在していることも確認できた。集う人々の多くは、出身地に見出せない将来の希望を求めて、カナダやドイツで働いている。典型的な経済移民の姿であり、その背後には出身地インド・パンジャーブの不安定な状況がある。しかしその不安定な状況は、経済的な困窮に留まらない。人々は社会的、政治的な行き詰まりに直面し、その対応として海外移住を選択している。この現代的な危機に対するグローバルな対応は、スィク教徒にとってはイギリス植民地時代に遡るものであり、以降現代までのインド・パンジャーブにおける危機には、つねにスィク教という宗教を介した非国家ネットワークが大きな影響を与えてきた。そして現在においては、この非国家ネットワークが、スィク教徒移民のみならず、移住先社会との間で相互に影響を与えている。とくに、パンジャーブ移民の多いカナダでは、スィク教徒の非国家ネットワークが、インドとカナダの国家間関係にも影響を及ぼしている。これらのことが、寺院の運営、国外を含めた寺院間ネットワーク、ネットワークを介した人の移動に関する調査から明らかになっている。非国家・国家間関係や、国家間関係といった大きな枠での構図がある一方で、人々の日々の生活というローカルな文脈における寺院の役割がある。その役割は集まる信徒の政治的および社会的立場に関わらず求められている。寺院を結節点とするグローバルな非国家ネットワークと、移民の日々の暮らしのなかで要請される寺院という場が重なっている。寺院を介してグローバルに展開するスペースやネットワークを駆使しながら、直面する問題と対峙するパンジャーブ移民の姿がみえてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に記したように、宗教、国家、非国家的主体、移民のそれぞれの繋がりを見出すことが、これまでの調査内容を検討することで可能になっているから。
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今後の研究の推進方策 |
インドでの調査日程が十分確保できなかったため、本年度はそれを確保し、成果報告内容に反映させたい。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、本年度中のインド調査実施が難しい可能性がある。その場合には、繰越の可能性も含め検討する。
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