本研究の目的は、アフリカに端を発するホモ・サピエンスの定着イベント(約4万年前)が、東アジアの人類文化にどのような文化要素や行動様式の変化をもたらしたかを解明することにある。研究の舞台は、良好な検討対象資料が充実している中国北部である。 この目的を達成するため、2020年度は以下の3項目の研究に取り組んだ。 研究項目①:各遺跡の石器群の正確な年代を把握する。既掘遺跡から放射性炭素年代測定、古地磁気層序法に関わるサンプルを獲得し、その分析・解析から石器包含層の正確な年代を決定する。具体的には、中国河北省泥河湾盆地に位置する西白馬営遺跡、中国河北省水簾洞遺跡の年代を明らかにした。 研究項目②:約4万年前を境に、文化・行動要素にどのような変化が生じたのかを解明する。文化要素に関しては、製作実験にもとづく石英製石器の観察基準に照らし、石器の技術形態学的な特徴を読み解くことを目指した。具体的には石器の観察、実測図の作成、3Dデータの取得によって石器群の基礎情報を整理し、これをもとに石器群を記載した。行動要素に関しては、石器使用痕分析を実施した。 研究項目③:日本列島におけるホモ・サピエンス定着期の文化・行動要素を把握するため、発掘調査を実施し、新規の資料を獲得する。とりわけ中国北部の石器群との正体的な待機を見越して、精確な年代情報を獲得する。具体的には、京都府京丹後市上野遺跡において発掘調査を実施し、AT(姶良Tn)火山灰降灰以前の文化層から、小型剥片石器群を検出した。 研究項目①・②については、2020年度は訪中しての調査が実施できなかったため、2019年度までに獲得した試料の分析、データ解析を実施した。研究項目③は、2020年度の状況を鑑みて実施した代替研究である。
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