(1) 前年度実施したコンタクトレス光支援電気化学エッチング(PEC)およびアルカリ溶液処理によるGaNナノワイヤの形成法についてさらなる検討を行った。PECエッチング時間に対するエッチング深さの変化を評価したところ、エッチング時間が増えると、エッチング時間とエッチング深さの関係に線形性が失なわれるとともに、表面平坦性が劣化することが明らかとなった。さらに、その後のアルカリ溶液処理によりGaNナノワイヤの微細化および側面ラフネスの除去は可能であるが、現在の処理条件では長時間のPECエッチングよって発生したエッチング表面の非平坦性は改善しないという結果が得られた。 (2) 古典的1次元ナノワイヤMOSFETのモデルおよび1次元の弾道的輸送モデルにもとづき、InAsおよびGaNナノワイヤトランジスタの性能予測を行った。ナノワイヤ一周の寸法により規格化したオフ電流の密度が一定という条件のもとナノワイヤ寸法によるトランジスタの特性を比較したところ、いずれのモデルにおいても、オン電流密度がナノワイヤ直径の微細化ともに増大するという結果が得られた。これにより、ナノワイヤのような微細構造を有するトランジスタであっても、ナノワイヤ寸法を適切に制御し、またナノワイヤ密度を十分高くすることができれば(例えばナノワイヤの占有面積25%以上)ならば、大電流を制御する上では通常の縦型トランジスタよりも優位となる可能性のあること、よって、ナノワイヤの特徴である短チャネル効果耐性も考慮し、ナノワイヤ縦型トランジスタがパワーエレクトロニクス応用にも十分耐えられる可能性を示した。 (3) RF支援分子線エピタキシャル(RF-MBE)法を用いた選択成長法によるGaNナノワイヤの形成を確認した。高さ約0.3 μm、断面寸法120 nmのGaNナノワイヤアレイを得ることができた。
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