窒化ガリウム(GaN)をはじめとしたIII-V族窒化物半導体のデバイス特性向上を目指し、結晶成長技術の観点から研究に取り組んでいる。とくに本研究課題では、希土類元素の添加がGaN系半導体の結晶成長様式を大きく変化させることに着目した。最終年度では、微傾斜サファイア基板上にGaNの成長を行い、表面にマクロステップを形成させた後にEu添加層を中間層として導入し、その上部に再度無添加GaN膜を厚さを変えながら成長することで、マクロステップが除去されていく成長過程を蛍光顕微鏡と光学顕微鏡の同時観察により評価した。 添加されたEuはマクロステップ端に集中的に取り込まれ、成長に伴うマクロステップの進行を妨げることで表面のマクロステップを除去し、同時にEu添加層が適切な歪緩和層として働く事で、上部に成長した無添加GaN層の平坦な原子ステップ表面を持続的に実現することが明らかになった。この結果は、Eu添加GaN層上にInGaNなどの混晶を作製する際にも、圧縮歪の緩和に伴う、Inの取り込み量増大を誘起する可能性を示唆するものである。
また、マクロステップ除去後の微傾斜GaN表面にSi添加またはMg添加を施すことで、表面平坦性を維持したままpn伝導度制御を実現できることを見出した。とくにSi添加時にはAlを微量に共添加することで新たに発生するステップバンチングを抑制しつつ、n型層の成長ができることを示し、本研究の目標であった表面平坦なバイポーラ素子の作製に成功した。
上記の知見を活かし、Eu添加GaN層上にInGaN量子井戸構造を有するLED構造を作製することで、三原色LEDの集積を実現する等、デバイス応用に向けた展開の一端も示すことが出来た。
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