研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
19H04546
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
相馬 聡文 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20432560)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機械学習 / デバイスシミュレーション / 強束縛近似バンド構造計算 / デバイス最適化設計 |
研究実績の概要 |
機械学習を原子膜デバイスのシミュレーションと最適化設計に応用する事を目的に,2019年度はまず,第一原理計算で得られるバンド構造を再現する強束縛近似法パラメータをニューラルネットワークを用いて抽出する方法を確立した.また新規素子設計指針確立の観点から,歪みグラフェンFETにおけるフォノン散乱の影響について解明した.更にデバイスパラメータ探索の観点から,非平衡グリーン関数法に基づくデバイスシミュレーションを畳み込みニューラルネットワークを用いて高速化する手法を確立した.ここでは,ダブルゲートMOSFETを舞台としたNEGF法に基づくデバイスシミュレーションにおいて,自己無撞着計算の各繰り返しステップにおけるポテンシャル分布を入力画像,NEGFによって計算される電荷分布と量子キャパシタンス分布を出力画像とし,これらを学習データとする事によりCNN学習を行った.更にこの学習済みCNNをNEGFの自己無撞着計算における各ステップにおいて電荷分布と量子キャパシタンス分布の推論に用いる事により,通常のNEGFの自己無撞着計算において要求されるエネルギー積分計算を行うことなくデバイス特性を予測する事を可能にした.CNNの持つ汎化性能の恩恵により,学習に用いていないゲート長やチャネル厚に対しても有意な精度での推論が可能である事が示され,従って,典型的な幾つかのデバイススケールを包括する学習に基づく単一のCNNモデルを予め構築しておく事により,設計上重要となる様々なデバイススケールに対してのシミュレーションを高速に行う事が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は次の3つの項目:項目1(材料パラメータ探索),項目2(デバイスパラメータ探索),項目3(デバイス設計指針探索)から構成されるが,項目1については第一原理計算で得られるバンド構造を再現する強束縛近似法パラメータをニューラルネットワークを用いて抽出する方法を確立し,項目2についてはその中核技術として畳み込みニューラルネットワークを応用した非平衡グリーン関数法に基づくデバイスシミュレーションの高速化手法を確立し,項目3については歪みグラフェンFETにおけるフォノン散乱の影響について解明した.これらの事から,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
項目1(材料パラメータ探索)については,第一原理計算で得られるバンド構造を再現するTBパラメータのニューラルネットワーク(NN)を用いた抽出について,これまで取り組んできたIV族元素半導体,III-V族,II-VI族化合物半導体の場合を拡張し,二次元原子膜半導体の場合に取り組む.項目2(デバイスパラメータ探索)では,畳み込みニューラルネットワークを応用した非平衡グリーン関数法に基づくデバイスシミュレーションの高速化の更なる検討として,散乱を考慮した場合について取り組む.また,望ましいデバイス特性が与えられた時にそれを可能にするデバイスパラメータが求められるようなNNモデルの構築を今年度も引き続き行う.まずはモデル事例として,単一のデバイスパラメータ(例えば酸化膜厚)の幾つかの離散的な値に対し,他のパラメータ(ナノワイヤチャネルの場合はワイヤ半径など)を揺らがせた多数のデバイス特性を用意し,これを入力学習データとする事で,異なる酸化膜厚ごとにクラス分類するようなNNモデルを考える.このモデルの有効性を示した後,チャネル長と酸化膜厚等,複数のデバイスパラメータの組み合わせについての分類問題に発展させる. 項目3(デバイス設計指針探索)については,①h-BCN FETにおけるBN配置と②歪みグラフェンFETの歪み・結晶方位・結晶粒界・層構造の各因子の組み合わせの影響についての基礎データの抽出を今年度も引き続き行う.
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