GaN系LEDにおいて特筆すべき点は転位密度が高いにもかかわらずLEDの効率が非常に高いことにである。LED中の転位は発光層直下のInGaN/GaN超格子に起因したVピット形状の構造を活性層内に創成し、LEDの高効率化のメカニズムの要因となっている。しかしながら、高効率化 にはVピットを形成するとき超格子構造が必要であり、超格子はその構造がもたらす複合的な有利効果があり、それぞれの効果を個別には評価し切れていないのが現状である。本研究では、それぞれの要素がどう高効率化に作用するかを個別に分類できるように研究を遂行してきた。その結果、VピットとInGaN層が果たすを役割を、個別に評価することに成功し、最終的にVピット拡大層がPL発光強度に与える影響の理論式を導出することができた。 1つ目に、MQW直下にSLを挿入した場合、SLの膜厚と発光強度の関係となる式を導出した。この式は拡散係数αにより発光強度が増加する傾向が大きく変化し、これは拡散長に大きく依存する。したがって、SLが発光強度を回復する効果は拡散係数αにより表現することが可能となった。 2つ目に、最大の発光強度で飽和させる効果のあるSL上に点欠陥混入効果のあるMT-GaNを成長したサンプルのVピット拡大層の膜厚と発光強度の関係となる式を導出した。この式は係数βにより発光強度が減少する傾向が大きく変化し、これはMT-GaNが点欠陥を混入してMQWに悪影響を与える効果に大きく依存する。したがって、MT-GaNの様に点欠陥を混入し発光強度を低下させる層がMQW直下に挿入された場合、発光強度を低下させる効果を係数βにより表現することが可能となった。 以上のように本研究によりVピットとInGaN層の役割を個別に評価することと及びその理論式の導出に成功し、今後のLEDにおけるさらなる効率化につなげていく重要な指標を獲得できた。
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