研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04561
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山本 浩司 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (80725557)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カーボンナノベルト / 金属カーボンナノベルト / キラル素子 / 遷移金属錯体 / カルバゾール / ピラジン |
研究実績の概要 |
芳香環が環状に縮環したカーボンナノベルト(CNB)は,カーボンナノチューブの部分構造に相当し,その物性と機能に関心がもたれている.そのπ共役骨格に金属原子を組み込んだ金属-カーボンナノベルト(M-CNB)では,金属原子のd電子と共役系のπ電子との相互作用により,CNBとは異なる特性の発現が期待される.本研究では,このM-CNBにキラリティーを導入したキラルM-CNBを開発し,その筒内部のアシンメトリック配位空間が生み出す機能の発見・開拓を目指す. 初年度は,M-CNBの前駆体となる環状配位子の合成を検討した.具体的には,カルバゾールとピラジンを交互に連結した環状配位子に着目した.まず,カルバゾール上にt-Bu基を導入した誘導体の合成を試みた.カルバゾール誘導体に対して数段階の変換を行った後に,環化前駆体の合成を検討した.反応後に得られた固体のマススペクトルから,目的物の生成が示唆された.しかし,その溶解性が極めて低く,単離が困難であったことから,これ以上の検討を断念した.そこで,化合物の溶解性を向上させる目的で,メシチル基を有するカルバゾール誘導体を用いた検討を行うこととした.その結果,化合物の溶解性が向上し,環化前駆体を得ることに成功した.得られた前駆体を用いて,環化反応を種々の条件下で検討したが,反応基質の分解が速やかに進行したために,目的物の生成は確認されていない.現在,異なる合成経路からの検討を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては,環状配位子の錯形成により,M-CNBを合成し,その諸物性を明らかにすることを目的に研究を遂行する予定であった.しかし,合成中間体の低溶解性や環化反応における基質の低安定性といった合成上の問題のため,環状配位子の合成が立ち遅れている状況である.そのため,進捗状況は当初計画と比較して,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在生じている問題は,環化反応における基質の分解である.この問題を回避するため,異なる合成経路からの検討を行っている.今後,環状配位子およびM-CNBの合成を達成し,M-CNBの諸物性を明らかにする.また,配位子を非対称化したキラルM-CNBの合成も並行して行い,筒内部のアシンメトリック配位空間の特性を探索する.
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