芳香環が環状に縮環したカーボンナノベルト(CNB)は,カーボンナノチューブの部分構造に相当し,その物性と機能に関心がもたれている.そのπ共役骨格に金属原子を組み込んだ金属-カーボンナノベルト(M-CNB)では,金属原子のd電子と共役系のπ電子との相互作用により,CNBとは異なる特性の発現が期待される.本研究では,このM-CNBにキラリティーを導入したキラルM-CNBを開発し,その筒内部のアシンメトリック配位空間が生み出す機能の発見・開拓を目指す. 今年度は,重要な鍵化合物である環状配位子の合成に成功した.配位子の合成法の確立という,本研究計画の最も重要な部分を達成できた.また,モデル化合物を用いて,二価パラジウムとの錯形成を予備的に検討し,モデル化合物にパラジウムが配位することが示唆された.
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