研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04563
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任准教授 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 金属有機構造体 / 反応中間体 / イメージング / 金属錯体 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
本研究では、化学反応の中で次々と生成しては消えていく中間的生成物(反応中間体)の一分子一分子を溶液中で捕捉し,その構造を原子分解能電子顕微鏡観察により決定することに成功した.化学反応は一般に,原料から生成物に至る過程で多数の反応中間体を経て進行する.これらの中間体はひとつひとつ構造が異なる上に,反応溶液中では平衡によりたえず構造変化しているため,実験的に構造をとらえることは困難であった.我々は,反応中間体に強い親和力を持つ「分子の釣り針」をカーボンナノチューブに装着し,このナノチューブを反応用に入れて反応を行ったうえで,急冷と濾過により素早く反応を止めることで,反応進行の各段階で生じる一連の中間体を釣り針上に捕まえ,一網打尽に構造解析する技術を開発した.今回の研究で取り上げた反応は,ガス貯蔵材料や触媒として用いられるMetal-organic framework (MOF) の生成反応であり,反応中間体である一次元から三次元構造を持つ集合体(クラスター)の構造を原子レベルで決定し,その統計情報から微小な分子集合体が結晶へと成長する反応機構を解明した.本手法は,人工的な化学合成反応に加え,天然の鉱物や骨などのミネラル生成のような材料形成の反応解析に適用でき,高効率化学反応の開発や生命現象の解明につながると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画に掲げた,配位高分子形成の微小中間体の捕捉と解析という目標が亜鉛MOFの反応中間体の構造解析という形で達成され,論文発表という成果に結実した.
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今後の研究の推進方策 |
今後,異なる金属有機構造体に当手法を展開し,配位高分子の形成メカニズムの一般論として重要となる知見を収集する.
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