研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04570
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
土方 優 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (70622562)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 多孔性配位高分子 / 理論計算 |
研究実績の概要 |
本年度の成果はHofmann型の二次元層状の多孔性配位高分子(PCP)の積層数に依存した吸着能の変化に関する以下のものである。本系では実験によって薄膜化することによって吸着能が変化するという報告がなされており、それらの現象の再現から理論計算に取り組んだ。 (1)バルク状態(無限に二次元骨格が積層した状態)においては、ゲスト分子(実験で報告されているエタノール)がユニットセルあたり一つ吸着することでは骨格がそれほど不安定化しないことが明らかになった。 (2)しかし、複数のゲスト分子が吸着した状態においては大きな不安定化が起き、ゲスト分子の吸着がエネルギー的に不利であることを明らかにした。 (3)同様の計算を数層が積層した状態の骨格で行ったところ、層間が大きく拡がりゲスト分子の吸着によって、安定化出来ることを示した。 また、これらはエタノールに限らずその他のゲスト分子(アセトニトリルなど実験で報告されているもの)でも同様の計算結果となり、一般的に現象と考えることができる。これらの結果は実験結果と整合性の取れるものであり、積層数が減ることで構造が大きく変化できゲスト分子が吸着可能となるという機構を提案した。 同時に、骨格を形成する配位子についても注目すると、ゲスト分子によって配位結合部分が歪むなど構造に歪みがかかっていることが示唆され、ゲスト分子の吸着には骨格のダイナミクスが重要となることが示唆される結果を得ることができた。(この点については次年度検討を行う)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次積層構造を有するPCPにおけるゲスト吸着において、積層数が減少することによってゲスト分子能が変化するという実験結果を再現することに成功し、その構造変化を理論計算によって定量的に見積もることができた。これらによって次年度に解析するべき構造の情報を準備することが出来たため。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に二次構造が積層したPCPにおけるゲスト吸着において、積層数が減少することによってゲスト分子能が変化するという実験結果を再現することに成功した。特にバルク状態(無限に積層した状態)と数層が積層した状態では、ゲスト分子の吸着において層間の広がり方に大きな差があった。そこで、この結果を中心に、積層数が異なる際の細孔内の静電場の変化を明らかにするとともに、層間の広がる過程とその際の静電場の変化を調べるとで、ゲスト分子の吸着した終状態ではなく、その吸着過程からゲスト分子の積層数に依存した吸着能の変化の起源にせまる。
|