研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04575
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 修平 京都大学, 高等研究院, 教授 (90452276)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属錯体多面体 / ソフトマテリアル / 軽鎖機能材料 / メゾスコピック / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属錯体多面体(MOP)を基盤とする多孔性ゲルを用いて、異方的かつ連続的な密度勾配を有する傾斜機能材料を創成する。特に 、MOPを超分子重合する際の自己集合化プロセスにおいて、メゾスケール領域で異方性を導入することで、ゲルネットワーク構造の密度及びトポロジーの制御を行い、マクロ物性との相関を解明する。最終的には、異方的物質輸送、連続的触媒反応、アクチュエータといった傾斜材料特有の機能発現へとつなげる。 MOPは空間の基本単位として認識でき、非周期的、異方的、非対称的ネットワークへと集積化させてもその空間特性は失われることはない。空間単位をより複雑にネットワーク化していくという概念そのものは全く提唱されておらず、本研究の最も独創的な点である。将来的には、空間 基本単位を3次元空間に自由に配置し、異方的物質輸送、反応の区画化と連動といった新しい化学システムの実現が期待される。 初年度は、MOPを用いたゲル化のメカニズムの解明と、遠心力を用いたメゾスケールの異方性導入に関する研究を行った。時間分解動的光散乱測定による実験により、MOPとビスイミダゾール系リンカーがどのような階層的自己集合化によりゲル化しているのかを明らかにすることに成功した。具体的には、MOP分子同士の会合(核生成)、コロイド粒子への成長、粒子同士の会合、パーコレーションによるゲル化という集合過程が起こっていることが明らかになった。実際に、遠心力を粒子同士の会合過程において与えると、底の方では密なコロイドネットワークが、上の方では疎なネットワークが組み上がり、異方的なレオロジーをもつゲルがされることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、MOPゲルの自己集合化過程のメカニズムの解明と、それを踏まえて、遠心力を用いることでMOPのコロイド粒子の密度及びネットワーク構造が傾斜を有するような新しいゲル材料を合成することに成功した。今後はこの階層的構造を有する材料のマルチスケールな構造解析を行うことを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は課題B-2である「マルチスケール構造解析」と多孔性傾斜材料の機能発現に関して研究を行う。分子レベルでのネットワーク構造解析はX線小角散乱(SAXS)により行い、メゾスケールでの構造決定は溶液中原子間力顕微鏡(AFM)、電界放出形走査型電子顕微鏡(FESEM)により決定する。動的粘弾性測定によりゲルのマクロ物性である粘弾性評価を行う。特に、分子レベルでの構造、メゾスケールでの構造との相関を詳細に調べることで、濃度勾配の影響を明らかにする。
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