研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04579
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野田 晃 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60366424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオハイブリッド触媒 / 人工金属酵素 / 指向性進化工学 / ロジウム錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、多彩な反応性を示す金属錯体触媒と、精緻な反応場を提供するバレル型タンパク質の融合により、アシンメトリー配位圏を有するバイオハイブリッド触媒を構築し、従来の金属錯体や酵素にはない新たな位置選択性や官能基選択性を付与した合成反応の開拓に取り組んだ。反応性の高いRh錯体を固定化したバイオハイブリッド触媒を活用し、位置選択的な炭素-炭素結合形成反応、また、バレル空孔内に芳香環拡張型のアシンメトリー配位圏を構築し、不斉Diels-Alder 反応を実証した。タンパク質には、強固なベータバレル構造を有するニトロバインディンの疎水空孔を活用して、様々な金属錯体触媒を共有結合により残基選択的に固定化したバイオハイブリッド触媒を開発してきた成果を踏まえて、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子をもつRh(III)錯体を選択し、マレイミドを導入した錯体とニトロバインディンの疎水空孔内のシステインを共有結合的に連結可能な手法を確立した。ジチオリン酸配位子で空配位座を保護したRh(III)錯体をタンパク質に連結後、硝酸銀の添加により、Rh(III)錯体を活性化する手法である。この手法により調製したバイオハイブリッド触媒は、硝酸銀存在下、フェニルオキシム及びアルキンの付加環化反応において触媒活性を示すことを明らかにした。ニトロバインディンの疎水性空孔にグルタミン酸を導入することによって、触媒活性が向上することを見出しており、Rh(III)錯体近傍のアシンメトリー空間の構築を成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子をもつRh(III)錯体を選択し、マレイミドを導入した錯体とニトロバインディンの疎水空孔内のシステインを共有結合的に連結可能な手法を確立しており、Rh(III)錯体近傍のアミノ酸に部位飽和変異を導入したバイオハイブリッド触媒を網羅的にスクリーニングに着手しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子をもつRh金属錯体をタンパク質に共有結合的に連結可能な手法を確立しており、硝酸銀の添加により配位不飽和なRh(III)錯体を生成可能なバイオハイブリッド触媒を用いて、フェニルオキシムとジフェニルアルキンを基質としてイソキノリン誘導体を生成する付加環化反応が進行することを実証した。生成物のイソキノリンが有機溶媒とバッファー溶液を一定の割合で混合した条件で、強い発光を示すことを見出しているので、生成物の発光を指標に利用して、網羅的にRh(III)錯体の近傍に変異を導入したバイオハイブリッド触媒の活性を迅速に評価する。さらに、フェニルオキシムとジフェニルアルキンの誘導体を用いて反応を実施し、基質展開を行い、アシンメトリー配位圏を有する活性の高いバイオハイブリッド触媒を複数同定する。また、これらのバイオ触媒を用いて、非対称な基質の検討を行い、化学選択性や位置選択性の付与した反応の開拓に取り組む。
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