研究実績の概要 |
本研究では、複数種の有機分子を階層的かつ自律的に組み上げることによって超分子多孔質構造を構築し、化学修飾により配位性部位を空孔表面に露出させることで目的に応じた触媒金属を導入して、空孔内に高度に制御された反応場を構築することを目的としている。 同じptsネットワークトポロジーを基本としながら多孔質構造を構築するために、平面分子であるビフルオレン骨格を持つ2, 2’, 7, 7’-テトラキス(4-スルホフェニル)スピロビフルオレン (spiroBPS) を用いた。このスルホン酸と前年開発したF、Cl、Br、Iを導入したTPMA誘導体を合成し、spiroBPS多孔質材料を作成した。TPMA-Br塩とTPMA-I塩については、トポロジーpthを有し、スルホン酸同士が60°ずつ交差した構造を得られていることが単結晶X線構造解析の結果から判明した。また、TPMA-CF3塩についてもトポロジーptsを有し、スルホン酸同士が約90°で直交した構造が得られていることが判った。いずれの結晶においても置換基のかさ高さにより、相互貫入がなく、空隙率が50%を超える高空隙な構造であり、スピロビフルオレン骨格のひずみに起因したキラルな空間群を持つ構造であり、アシンメトリック配位空間を実現できた。またそれぞれの結晶においてもアキラルなゲストではプラス向きとマイナス向きのCPLを発現する結晶が混在したラセミ体(自然分晶)となり、エナンチオピュアな材料の構築は困難であった。しかしながら、貧溶媒にキラル源となるテルペン化合物を加えることでそれぞれのエナンチオピュアな材料を誘導することに成功した。これらを用いて固体円偏光の測定を行ったところ、非常に効果的にCPLが発現していることが判った。
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