研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04582
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
中島 隆行 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (80322676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属鎖 / 四座ホスフィン / キラル / パラジウム |
研究実績の概要 |
本新学術領域研究では,キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を用いたキラルなPd8核鎖の物性開発(研究課題①)や、dpmppmの中央のメチレン炭素を電子的・立体的に調整可能でかつキラルな置換基Rの導入も容易なイミノ基に置換した新奇な四座ホスフィンrac-Ph2PCH2P(Ph)N(R)P(Ph)CH2PPh2を用いたキラルな金属鎖に関する研究(研究課題②)を行っている。今回は研究課題②の配位子の知見を得る目的で行ったrac-dpmppan (R = Ph)による混合金属4核錯体について報告する。rac-dpmppan に [M2(XylNC)6](PF6)2 (M = Pd, Pt) 及び [Pd(dba)2] を 2:1:2 の比で反応させると,直鎖状 4 核錯体 [PtnPd(4-n)(rac-dpmppan)2(XylNC)2](PF6)2 (n = 0: Pd4 (1), 2: Pt2Pd2 (4)) が得られた。電子吸収スペクトルでは,アセトニトリル中室温で,634 (1),601 (2),584 (3),527 (4), 510 (5) nm に特徴的な吸収が観測され,吸収エネルギーは金属骨格に含まれる白金の数と位置に応じて変化することがわかった 。結晶構造をもとに TD-DFT の一点計算を行うと,強い振動子強度で HOMO-LUMO遷移由来する吸収が予想され,その計算値は観測値と概ね一致した。金属骨格(Pt/Pd)の組み合わせで HOMO-LUMO gapを精密にチューニングできることが分かり,合金ナノワイヤーを原子レベルで精密に構築する上での重要な知見につながる。今後はキラルな置換基Rを導入した配位子を用いてキラルな混合金属鎖合成へと展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな分子積金属鎖に関する物性開発に関しては遅れが見られるものの,キラルな金属鎖合成に関しては順調に進展している。さらに研究課題②における新奇な配位子rac-Ph2PCH2P(Ph)N(R)P(Ph)CH2PPh2を用いた結果,合成例の極めて少ない異種金属鎖[PtnPd(4-n)(rac-dpmppan)2(XylNC)2](PF6)2 (n = 0: Pd4 (1), 2: Pt2Pd2 (4))を合成することができた。これをキラル分子へと展開する計画であり,今までにない新しい物性の発現が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね研究計画通りに進行しているので,①「キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmを用いたパラジウム分子ワイヤーの合成と自己不斉認識によるPd鎖の拡張」に関しては,これらの物性開発を進めるとともに,金属鎖の両端を有機基で連結したキラルポリマーへと展開する計画である。②「新奇不斉四座ホスフィン配位子によるキラルな分子性金属鎖の創成」に関して,今年度見出した異種金側鎖をキラル金属鎖へと展開し,新たな物性開発に取り組む予定である。
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