研究実績の概要 |
本公募研究課題では,これまでに前例がない「キラルな分子性金属鎖」の創成を目的とし,研究課題(1):Pキラルな直鎖状四座ホスフィン(R,R), (S,S)-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を用い光学的に純粋なPd8核鎖の合成・物性開発と、研究課題:(2)dpmppmの中央のメチレン炭素を電子的・立体的に調整可能でかつキラルな置換基Rの導入も容易なイミノ基に置換した新奇な四座ホスフィンrac-Ph2PCH2P(Ph)N(R)P(Ph)CH2PPh2(rac-dpmpppan)を用いた金属鎖の合成を行った。研究課題(1)では直鎖状四座ホスフィンrac-Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2 (dpmppm)を不斉ビスイソシアニドを配位子とする環状パラジウム錯体利用して光学分割し,世界的に最長となるキラルなPd8核金属鎖を合成し,その構造と電子状態を明らかにした(Inorg. Chem. 2021)。研究課題(2)では,rac-dpmpppanを用いると白金パラジウム異種金属4核鎖Pd(4-n)Ptn (n = 0-3)が生成することを見出した。電子吸収スペクトルは金属骨格に含まれる白金の数と位置に応じて変化することがわかった 。金属骨格(Pt/Pd)の組み合わせで HOMO-LUMO gapを精密にチューニングでき,合金ナノワイヤーを原子レベルで精密に構築する上での重要な知見につながる知見を得ることができた(Chem. Eur. J. 2019)。今回の研究課題を通じて,配位子の立体的・電子的効果が金属鎖の電子特性に大きな影響を与えることを明らかにした。今後の分子性金属鎖の物性開発を展開するうえで,有用な研究指針を見出した。
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