研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04586
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石田 真敏 九州大学, 工学研究院, 助教 (60706951)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | π共役 / トポロジカルキラリティ / オリゴピロール |
研究実績の概要 |
ヘリカル/ノット/メビウスリングなどの数学的幾何学理論に基づく物質科学、およびその形状特有の高度機能を発現する分子科学が近年目覚ましく発展している。π共役骨格を組み込むことで、新たな光機能性キラルマテリアルとして、刺激応答センサー、不斉認識プローブ等の応用展開が期待されている。 本年度の研究計画では、柔軟なπ共役系オリゴピロール骨格が成すトポロジカル構造を金属イオンの配位によって構築する設計指針により、種々の巨大π共役系キラル金属錯体の創製を行った。パラジウムイオンとの錯形成によるメビウス捻じれ型オクタフィリンの異性体の合成を行い、トポロジカル構造に基づく大きなキラル光学因子(g値)を持つことを見出した。また、トリピリンニッケル錯体部位の相対配置の異なる二種類のヘリカル状に捻じれた拡張ポルフィリン化合物を合成し、プロトン化を介して、P体からM体への異性化する特異なスイッチング挙動を明らかとした。 領域内共同研究においては、A03の吉沢グループと共同で、非対称ヘキサフィリンヘテロ金属錯体の水溶性超分子カプセルの内包化に成功し、近赤外光音響イメージングを志向した光増感剤の開発した。またA02の君塚グループと共同で、ポルフィリンおよびポルフィリン異性体から成る階層型金属有機構造体(MOF)の開発を行い、エネルギー移動特性について評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本本研究では、π共役骨格の積極利用により近赤外答性キラル錯体分子の創製およびキラルπ骨格に埋め込まれた金属イオンの磁気物性について明らかとすることを重点課題としている。計画初年度では、重要課題の一つであった外部刺激に応答する螺旋状π共役金属錯体の準安定構造間のヘリカルスイッチングが達成され、デバイス応用に向けた重要な知見が得られた。また、36π電子系巨大共役骨格を持つオクタフィリンのトポロジカルキラル構造を用いる金属イオンの種類によって選択的合成を達成し、キラル分光特性について明らかにした。 以上の知見を基に、ルイス酸性の金属イオンが配位したヘキサピロール骨格の捻じれ方向に由来するキラリティのスイッチング現象を、キラルアミノ酸の結合によるセンサー応用について予備的な知見も得られつつある。 以上のように、計画研究は順調に進展が見られており、また派生した新たな研究シーズが得られていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画としては、これまでの知見を基に、金属含有ナノヘリケートのソレノイド特性の評価に向けた、完全π共役骨格の形状に基づいたボトムアップ合成アプローチによるオリゴピロール分子の連結反応開発に取り組む予定である。また、中空状環状π共役オリゴピロール分子を基盤とした空間結合したインターロック分子(Mechanically Interlocked Molecules: MIMs)であるカテナン・ロタキサン等の動的なトポロジカル 分子材料の創製を目指す。このような非対称要素を持つ環状分子ユニットの貫通方向による未踏の不斉化合物の開発を行う。
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