研究実績の概要 |
プロトン・イオン移動を電荷貯蔵・情報記憶の媒体として利用するために、プロトン共役電子移動 (PCET) 反応を示す金属錯体あるいは金属酸化物を利用した分子メモリスタの創製を目指した。PCETを示す2種類のルテニウム錯体積層膜で修飾した2つの電極間での酸化還元電位の差と分子のレドックスに伴うpKa値の変化を、プロトン伝導性を持つpoly(4-vinylpyridine) ポリマーで接合した二端子デバイスの電流―電圧(I-V)特性はヒステリシスをもつ非線形のI-V特性を示し、レドックスに伴うプロトン濃度勾配をプロトン伝導の駆動力とする抵抗変化型スイッチングによるプロトンメモリスタの創製に成功した。また、プルシアンブルー (PB)とRu二核錯体とのヘテロ接合膜での電位勾配を利用した電子の整流性とPBの空孔内へのイオン移動の組合せによるイオン貯蔵を二次電池に応用できることを見出した。次に、プロトン伝導性をもつ液体MOFである[Zn(HPO4)(H2PO4)2](ImH2)2 (Im: イミダゾール, 以後Zn-MOFと略す)とPCET反応WO3 + e- + nH+ =HnWO3を示すWO3を組み合わせたヘテロ接合膜ITO||ZnMOF/WO3||Wを作製した。このヘテロ接合型二端子デバイスのI-V特性は非線形であり、電位掃引により特徴的な8の字型ヒステリシスが観測された。Zn-MOF中にRuトリスビピラジン錯体[Ru(bpz)3]2+をドープしたITO||ZnMOF([Ru(bpz)3]2+doped)/WO3||Wの二端子デバイスは可視光応答性を示した。以上の結果は、ZnMOF中にドープした[Ru(bpz)3]2+が光MLCT励起状態では錯体の塩基性が増し、プロトンの授受を仲介し、MOF内でのプロトン伝導を促進することでプロトンメモリスタの光制御が可能となった。
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