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2019 年度 実績報告書

13族元素混合型水素化物の合成と反応性の開拓

公募研究

研究領域配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学
研究課題/領域番号 19H04601
研究機関近畿大学

研究代表者

松尾 司  近畿大学, 理工学部, 准教授 (90312800)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードアルマボラン / アルミニウム / ホウ素 / 13族元素混合型水素化物 / 非対称型水素化物 / 配位アシンメトリー / ヒドロアルミニウム化 / 立体保護基
研究実績の概要

本研究では、「アルマボラン(6)」などの新奇な「13族元素混合型水素化物」を設計・合成し、「非対称型水素化物」の分子構造や電子状態を解明するとともに、小分子の活性化などの反応性の開拓を通して、新しい学理「配位アシンメトリー」の創出に貢献することを目的とする。これまでの元素科学研究から見いだした先駆的知見をプラットホームにして、学術的にも価値の高い「非対称型水素化物」を創り出し、従来の対称型水素化物では困難であった小分子の活性化法や異種元素間結合の構築法を開発して、「配位アシンメトリー」の新しいサイエンスに立脚した分子機能の創出に貢献することを目的とする。
令和元年度は、種々の「縮環型立体保護基(Rind基)」 を有する「ジボラン(6)」と「ジアルマン(6)」を合成し、それらの均一化反応に基づく「アルマボラン(6)」の生成について調査した。かさ高いEind基を有する「ジボラン(6)」と「ジアルマン(6)」との反応では、「アルマボラン(6)」が定量的に生成する反応条件を見いだし、合成法を確立した。しかし、得られた「アルマボラン(6)」の単結晶X線構造解析では、アルミニウム原子とホウ素原子とのディスオーダーが観測された。Eind基よりもかさ高いMPind基を有する「ジボラン(6)」とEind基よりもかさの小さなEMind基を有する「ジアルマン(6)」との反応では、溶液中で「アルマボラン(6)」と「ジボラン(6)」「ジアルマン(6)」との平衡状態になることがわかった。この溶液から「アルマボラン(6)」の結晶が得られたため、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。
また、令和元年度は、「ジボラン(6)」、「ジアルマン(6)」、「アルマボラン(6)」とピリジン類との反応性について調査した。ピリジンのヒドロアルミニウム化反応について明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新奇な13族元素混合型水素化物である「アルマボラン(6)」の合成法を確立するとともに、
ディスオーダーのない単結晶X線構造解析に向けて、種々のRind基を有する誘導体の合成・単離を行っている。理論計算による電子状態の解明とともに反応性の開拓にも着手しており、「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
「ジボラン(6)」とピリジンとの反応では、ボラン・ピリジン付加体が生成するのに対し、
「ジアルマン(6)」「アルマボラン(6)」とピリジンとの反応では、ピリジンのヒドロアルミニウム化反応が進行することを明らかにした。
13族元素と14族元素を組み合わせた新奇な水素化物の開発など、従来にない「非対称な三中心二電子結合」の化学が期待できる状況にある。

今後の研究の推進方策

研究成果をまとめるためには、「アルマボラン(6)」のディスオーダーのない単結晶X線構造解析が極めて重要であり、そのためには種々のRind基を有する「アルマボラン(6)」の合成に取り組む必要がある。新たにMPind基とEMind基を入れ替えた新奇な「アルマボラン(6)」の合成に取り組むとともに、電子的効果の異なるかさ高いアリールオキシド配位子「(Rind)O-」の導入についても調査する計画である。
合成法を確立したEind基を有する「アルマボラン(6)」については、さらなる反応性の開拓を推進する。ルイス塩基であるNHCやピリジン類との反応だけでなく、アルマボラン(6)ならではの反応性を見いだすために、一酸化炭素や二酸化炭素などの気体小分子との反応性についても調査する計画である。
さらに、反応活性なハロゲンが置換した14族元素の二価化学種である「ハロテトリレン」が研究室にあることから、「13族元素ー14族元素混合型水素化物」の開発に挑戦し、従来にない「非対称な三中心二電子結合」の化学を切り拓く計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Products of [2+2] Cycloaddition between a W≡Si Triple-bonded Complex and Alkynes: Isolation, Structure, and Non-classical Bonding Interaction2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshimoto Takashi、Hashimoto Hisako、Ray Mausumi、Hayakawa Naoki、Matsuo Tsukasa、Chakrabarti Jaydeb、Tobita Hiromi
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 49 ページ: 311~314

    • DOI

      10.1246/cl.190952

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of the Chemical Bonding in (Eind)2Ge=E (E = O and S): Synthesis and Characterization of Germanethione Bearing Bulky Eind Groups2020

    • 著者名/発表者名
      Fujita Naoko、Li Liangchun、Lentz Nicolas、Konaka Shigeaki、Kuroda Airi、Ohno Ryoma、Hayakawa Naoki、Tamao Kohei、Madec David、Kato Tsuyoshi、Rosas-S?nchez Alfredo、Hashizume Daisuke、Matsuo Tsukasa
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 49 ページ: 141~144

    • DOI

      10.1246/cl.190795

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Reaction of Dialumane Incorporating Bulky Eind Groups with Pyridines2019

    • 著者名/発表者名
      Murosaki Takahiro、Ohno Ryoma、Agou Tomohiro、Hashizume Daisuke、Matsuo Tsukasa
    • 雑誌名

      Inorganics

      巻: 7 ページ: 129~129

    • DOI

      10.3390/inorganics7110129

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and Thermal Reactions of a Spiro-type Cyclotrisilene Obtained from the Reaction between a Disilenide and a Base Adduct of a Bromosilylene2019

    • 著者名/発表者名
      Kosai Tomoyuki、Nishimura Shogo、Hayakawa Naoki、Matsuo Tsukasa、Iwamoto Takeaki
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 48 ページ: 1168~1170

    • DOI

      10.1246/cl.190438

    • 査読あり
  • [学会発表] Synthesis and Structures of Aluminum Hydride Complexes with Bulky Monodentate Aryloxide Ligands2020

    • 著者名/発表者名
      NAKAI, Tomohiro; WATAUCHI, Toshiki; MUROSAKI, Takahiro; MATSUO, Tsukasa
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会
  • [学会発表] Synthesis and Reactivity of Group 13 Element Compounds with Bulky Rind Groups2020

    • 著者名/発表者名
      SUZUKI, Takeo; SADAMORI, Kazuya; HASHIZUME, Daisuke; MATSUO, Tsukasa
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会
  • [学会発表] かさ高い Rind 基を有する13 族元素化合物の合成と反応性2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木 健央・室﨑 貴大・金田 将平・貞森 和也・北端 拓也・吾郷 友宏・橋爪 大輔・松尾 司
    • 学会等名
      第46回有機典型元素化学討論会
  • [学会発表] 安定なジアルキニルボランの合成と性質2019

    • 著者名/発表者名
      河野 黎・吾郷 友宏・福元 博基・久保田 俊夫・鈴木 健央・松尾 司
    • 学会等名
      第46回有機典型元素化学討論会
  • [学会発表] かさ高いRind 基を用いた13 族元素化合物の化学2019

    • 著者名/発表者名
      松尾 司
    • 学会等名
      第25回錯体化学若手の会 中部・東海支部勉強会
    • 招待講演
  • [備考] 近畿大学応用元素化学研究室

    • URL

      http://www.apch.kindai.ac.jp/element-folder/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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