公募研究
沈み込み帯におけるスロー地震の発生を規定する環境要因として、流体の存在、脆性-延性遷移、パッチ状の構造など複数の仮説が提唱されている。白亜紀~古第三紀の付加体である四万十帯は約150~350℃の被熱を受けたことが知られているが、その分布の南西端に位置する沖縄県慶良間諸島には非常に高温の被熱を受けたと考えられる地質体が分布しており、沈み込み帯における脆性-塑性遷移を記録していると期待されることから調査を行った。慶良間諸島の砂岩中のジルコンU-Pb年代の最若値は約104 Ma, 白雲母K-Ar年代は約90 Maであり、付加体の形成と上昇は約100 Ma前後の短期間に生じたことが判明した。ラマン分光分析から最高被熱温度は約500℃と見積もられ、これは緑色岩の鉱物組み合わせと調和的であった。緑色岩と砂質/泥質変成岩の境界は初生的には貫入境界を示しており、この高い被熱は海嶺沈み込みに伴う高い地温勾配によるものと推定した。砂岩中に四万十帯で初となるマイロナイトを発見した。マイロナイトは礫岩を原岩とする部分に特徴的に発達し、EBSD分析の結果から、石英のc軸ファブリックはtype-IIクロスガードルを示し、変形時の温度は最高被熱時とほぼ一致することが示された。北西側が衝上する剪断センスは泥質変成岩中の石英脈集中帯など脆性変形部にも観察され、沈み込み時の温度上昇を伴う一連の変形を記録すると考えた。慶良間諸島では石英脈を多く含む泥質変成岩中に見られる溶解-析出クリープから礫質マイロナイトに見られる延性変形まで、変形機構の変化と脆性-延性遷移の痕跡が産することを明らかにし、石英脈の形成が脆性-延性遷移の直前に生じたことを考察した。今後マイロナイトの詳細な解析を継続することにより、地温勾配・流体圧と沈み込み帯のレオロジーとの関係に天然から制約を与えることが期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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