研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04633
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 酵素設計 / DeepLearning / AI / ソフトウェア開発 / Ligand-based / Reaction-based / 非天然機能性分子生合成 / 酵素による有機合成 |
研究実績の概要 |
生物合成系の再設計による機能分子の革新的創製を実現するための一つの戦略は、天然酵素を利用して非天然型機能分子の生合成経路を創成することである。そこで、天然酵素から基質に対する特異性と汎用性を持つ酵素への改変をしなければならない。本研究は、非天然型フェニレフリンの生合成経路の構築をモデルにして、生合成経路における酵素改変の人工知能(AI)設計・創製ツールの開発である。本ツールはReaction-basedとligand-based設計法を融合したAI学習しながら、人間の処理能力をはるかに超える残基間のネットワーク的な相互作用を考慮する酵素変異を設計する。成功すれば、触媒反応をそのまま利用しながら、多様な基質に適用できる新規酵素の開発が容易になり、変異体の試行錯誤実験量が軽減し、非天然型生合成系の合理的再構築のための自由自在な酵素改変が可能になることが期待できる。 令和元年度には、まず、ツールのシステム設計と骨格を構築し、変異体設計の土台である、タンパク質とリガンド分子間の相互作用解析と結合可能性を評価するディープニューラルネットワーク(DNN)の開発を行った。DNNトレーニング用のデータとして、三つのデータバンク(PDB-bind、PubChem、Uniport)から、ポジティブとネガティブデータとしてそれぞれ5994、5969複合体であり、計11963個を抽出した。リガンドの記述のモジュールを開発し、タンパク質の特徴に対しては、配列情報の1Dプロフィール法を用いた。開発したDNNは7層の構造であり、ランダムに取り出した9990個のデータを用いてトレーニングし、残りの1973個のデータをテストした。その結果(安定性と精度)、構築したDNNのパフォーマンスが、タンパク質とリガンド分子間の結合可能性を評価できることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、 1.ツールのシステムの設計と骨格を構築した。 2.リガンドの特徴を記述するモジュールを開発した。 3.タンパク質の特徴を記述するモジュールを開発した。 4.タンパク質とガンド分子間の結合可能性を評価するできるディープニューラルネットワーク(DNN)の構築ができた。 以上の進捗状況によって、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
予定している研究計画の通りに、構築しているDNNを用いて 1.結合環境の特徴の自動抽出モジュールの開発 2.変異体のAI設計モジュールの開発 そして、非天然型機能分子フェニレフリンの生合成をモデルとして、その合成酵素の候補であるTDC、 DDC、 PNMTの基質特異性に影響を及ぼす変異体を設計する。その後、構造レベルのシミュレーションにより確認し、変異体の作製・活性評価を行う。必要に応じて、基質アナログ/阻害剤との複合体の構造を解析する。また、変異体を設計する際に設計効率の改善や、遭遇した問題に対してプログラムの改良も行う。さらに、変異体の活性評価の結果によって、変異体設計のアルゴリズムを改良する。
|