研究実績の概要 |
植物においてタンパク質を大量に発現させる際に問題となるのが、タンパク質によっては壊死が引き起こされることであり、壊死により生合成酵素が分解され、代謝産物の蓄積量も低下してしまう。我々は200 mMアスコルビン酸を噴霧することで、壊死を抑制することができた。 植物ホルモンであるストリゴラクトンを蓄積させるにあたり、βカロテンを出発物質として、D27, CCD7, CCD8, CYP711A2およびP450還元酵素を、つくばシステムにより植物にて高発現させた。最終産物である4-デオキシオロバンコール(4DO、ストリゴラクトンの1つ)の蓄積量をアスコルビン酸噴霧の有無で調べると、アスコルビン酸噴霧により、約1000倍の蓄積量の上昇が見られた。これまで、イネd14変異体におけるストリゴラクトンの蓄積量が最大であったが、今回の蓄積量ははるかに上回り、植物におけるストリゴラクトンの蓄積量としては世界最高レベルであった。また、ストリゴラクトンとしての機能を示すかを調べるため、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)が誘引されるかを調べたところ、4DOを与えた場合、AM菌が多く誘引されることが明らかとなった。これらの結果から、つくばシステムを用いて、機能性ストリゴラクトンを大量に植物体内に蓄積させることに成功した。 植物ホルモンであるブラシノステロイドを蓄積するにあたり、カンペステロールを出発物質として、CYP90A1、CYP90B1、DET2、CYP90C1、CYP85A2およびP450還元酵素を高発現させ、アスコルビン酸噴霧を行った。ブラシノステロイドの1種であるカスタステロンの蓄積量としては世界最高レベルであった。
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