公募研究
本研究では,放線菌由来の独特な化合物(天然物)を見出すことを目的して,とくに病原性放線菌Nocardia属と動物細胞株との共培養という新たな手法により二次代謝産物の探索を行う.本目的のために,令和元年度は下記のような研究を実施した.1)放線菌株の選択:これまでにNocardia tenerifensis IFM10554T株とマウスマクロファージ様細胞 (J774.1)との共培養を行い,共培養特有な新規環状ペプチドnocarjamide を単離していた.今回,nocarjamideがJ774.1に対する細胞毒性(IC50 30.9 μM)を見出した.この結果から,Nocardia属は動物細胞との共培養により,単培養条件では産生しない細胞毒性物質を産生することが期待された.そこで,放線菌Nocardia属66種の単培養抽出物をJ774.1に対する細胞毒性を指標にスクリーニングし、細胞毒性を示さなかった菌株をJ774.1との共培養を行った。その結果、共培養選択的にJ774.1に対して細胞毒性を有する菌株を4株見出した。現在、そのうち1株の大量培養を行い、細胞毒性を有する天然物の探索を進めている.2)Nocardia altamirensis IFM10819株からの共培養選択的産生成分:76種のNocardia属放線菌を病原因子の遺伝子解析により5種を選別した。J774.1細胞存在下、選択したNocardia属5種を改変Czapek-Dox培地、28 ℃、静置条件にて2週間共培養を行った。得られた抽出物をLC-MSで比較した結果、Nocardia altamirensis IFM10819株に共培養選択的ピークを見出したので,本菌の大量培養を行い,抽出エキスから共培養選択的成分NFAT-133を単離した.本化合物は免疫抑制作用を持つことが知られている既知化合物であった.
2: おおむね順調に進展している
放線菌由来の独特な天然物を見出すために,とくに病原性放線菌Nocardia属と動物細胞株との共培養という新たな手法により二次代謝産物の探索を行った.動物細胞に対する細胞毒性および予備的な小スケール培養による抽出エキスのLCMS分析を併用することにより,共培養選択的な成分を産生する菌株のスクリーニングを行った.その結果,数種の興味深い菌株を見出し,また,その中の複数の菌株について大量培養を行い,抽出エキスから共培養選択的成分を単離した.
これまでの成果により,共培養選択的成分を産生する菌株を数種選別することができた.これら菌株一つ一つについて,動物細胞との共培養により,大量培養を継続して行うことにより,さらに数種の興味深い共培養選択的産生成分が見出されることが期待される.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
Heterocycles
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DOI:10.3987/COM-19-S(F)11
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