研究実績の概要 |
本研究では、糸状菌のマクロライド天然物に着目して、ゲノムマイニングと異種発現を基盤とする天然物探索を実施し、新規天然物、ならびに、新規生合成システムを発見することを目的としている。また、異種ホスト内で、様々な組み合わせで遺伝子を発現するコンビナトリアル生合成により、非天然型の化合物の生産も目指している。今年度は、コンビナトリアル生合成の材料を揃えるため、新規マクロライド生合成遺伝子クラスターの探索および異種発現による天然物創製を行なった。Arthrinium Phaeospermum、 Penicillium expansum、Macrophomina phaseolina、Aspergillus kawachii、Colletotricum incanumのゲノム上に見出したマクロライド生合成遺伝子クラスターを順次麹菌で異種発現させたところ、いずれのクラスターからも新規マクロライドが得られた。また、12, 16, 22, 24, 34員環と様々なサイズのマクロラクトン構造を構築する遺伝子セットを取得することができた。また、すべての化合物について、絶対配置を含めた詳細な構造を明らかにすることで、各HR-PKS加えてによるポリケタイド鎖生合成機構を明らかにした。マクロライドに対する修飾反応として、種々のP450に加え、ホスホコリンやホスホエタノールアミンをマクロライドに付加するユニークな修飾酵素を発見することができた。得られた新規マクロライドの中には、抗酸菌に対する抗菌活性を示す化合物を見出した。
|