各種プレニル基転移酵素を対象として、それらの「緩い」基質特異性の物質生産への応用、およびその特異性の分子機構の解明を目指した研究を実施した。シス型プレニル基転移酵素に関しては、メタン生成古細菌より見出した、基質特異性の緩い同酵素であるMM_0014が、通常の基質であるイソペンテニル二リン酸の4位炭素へのプレニル基転移(C-プレニル化)反応だけでなく、グリセロールなど小分子アルコールの水酸基へのプレニル基転移(O-プレニル化)反応を触媒できることを、X線結晶構造解析や質量分析などにより明らかにした。また、古細菌膜脂質の生合成に関わるプレニル基転移酵素の緩い基質特異性を利用し、天然には存在しないC30という長い炭素鎖を有する古細菌膜脂質アナログの酵素合成、および大腸菌による生産に成功した。その他、近年我々が見出した古細菌型メバロン酸経路の中間体を、野生型および変異型の各種プレニル基転移酵素の基質とする実験も実施した。期待した結果を得ることはできなかったものの、その研究の過程で、同経路に関わる新奇酵素について、いくつかの新しい発見を行うことができた。例えばホスホメバロン酸脱水酵素が、真正細菌由来の近縁酵素に関する報告とは異なり、[4Fe-4S]型の鉄硫黄クラスターを活性中心に保持していることをEPR解析により証明した。また、ホスホトランスアンヒドロメバロン酸脱炭酸酵素がプレニル化フラビンを補酵素とすることを再構成実験により証明した。
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