公募研究
1.エストライド脂質生合成酵素遺伝子の同定:ツノケイソウの持つエストライド脂質生合成酵素遺伝子の同定のために、ツノケイソウのcDNA発現ライブラリーを分裂酵母発現ベクターpAUR224(Takara Bio)を用いて構築した。用いたツノケイソウ細胞はリシノール酸メチル添加培地(終濃度1.2ug/ml)で3日間生育したものであり、この条件でエストライド脂質を蓄積することは既に論文報告している。また実際に脂質分析により確認した。作成したcDNAライブラリーの平均インサート長は1.82 kb、総cDNAクローン数は約12.8万クローンであり、遺伝子スクリーニングには十分な規模であると判断した。これらのライブラリのうち、6,400クローン分のプラスミドDNAを抽出し、分裂酵母への導入まで完了した。また分裂酵母がリシノール酸をエストライド化できないこと、リシノール酸(終濃度4mg/ml)に対して感受性を示すことを確認した。今後、リシノール酸添加培地でコントロール株と比べて良好な生育を示すクローンを探索する。2.ツノケイソウの中性脂質総量の底上げ:ツノケイソウは2倍体であり交配も困難なであることから、挿入変異による遺伝子破壊では容易に表現型が表出しないと考えられる。そこで、脂質増加型の表現型を示すツノケイソウ変異株を単離するためにアクティベーションタギング法を用いた。強発現プロモーターとしてツノケイソウの硝酸還元酵素遺伝子CgNRのプロモーターをゼオシン耐性遺伝子カセットの3’側に連結したDNA断片をツノケイソウゲノムにランダムに導入した。このような形質転換体を約4,800系統構築した。この中には野生株よりも有意に中性脂質量の増加した変異体系統が複数見出された。今後、これらの株のDNAタグの挿入座位を決定し、原因遺伝子を同定する。
2: おおむね順調に進展している
エストライド脂質生合成酵素遺伝子探索のための確度の高い方策として、リシノール酸に感受性を示す分裂酵母においてツノケイソウcDNAライブラリを構築し、機能スクリーニングを行うことを計画し実行した。エストライド脂質を生産しているツノケイソウ細胞由来のcDNAをまず大腸菌でライブラリ化し、遺伝子スクリーニングに十分な規模の約12.8万クローンのライブラリを構築することに成功した。また分裂酵母が感受性を示す培地中のリシノール酸濃度も見積もることが出来た。既にライブラリの一部を分裂酵母に導入して機能スクリーニングを開始している。また、ツノケイソウにおける脂質蓄積量の底上げのために、高脂質蓄積するツノケイソウ変異株をアクティベーションタギング法により探索し、実際に中性脂質蓄積量の変化した変異株を複数単離するに至った。さらにシロイヌナズナやナガミノアマナズナでの酵素遺伝子異所発現についても発現用プラスミドDNA等の準備を進めている。このようにエストライド化酵素遺伝子探索ならびにツノケイソウでの脂質蓄積量底上げの両研究目的について目処が立ちつつあるため。
エストライド脂質生合成酵素遺伝子の単離を最優先の研究目的とし、作出したcDNAライブラリを順次分裂酵母へ導入し機能スクリーニングを進める。今後、リシノール酸添加培地でコントロール株と比べて良好な生育を示すクローンを探索する。エストライド化酵素遺伝子を発現するクローンは、リシノール酸の水酸基がマスクされることで細胞毒性が軽減され、生育が回復すると期待される。アクティベーションタギング法により取得した中性脂質蓄積異常変異株についてはDNAタグ挿入座位の周辺ゲノム領域をTAIL PCRにより決定し、原因遺伝子探索により新奇なツノケイソウの脂質蓄積制御因子を単離する。エストライド脂質生合成酵素遺伝子が同定されれば速やかに、単離した高脂質蓄積変異株に導入する。また他の油糧植物への導入を進める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Front. Plant Sci.
巻: 11 ページ: 35-35
10.3389/fpls.2020.00036.
Plant J.
巻: 100 ページ: 610-626
10.1111/tpj.14473.
Plant Cell
巻: 31 ページ: 1127-1140
10.1105/tpc.18.00723.
Plant Cell Physiol.
巻: 60 ページ: 916-930
10.1093/pcp/pcz010.